白筋線維と赤筋線維の特徴から考える姿勢矯正を実現するための方法について解説していきます。
抗重力筋は赤筋線維が多い?
姿勢保持に関与する筋肉は重力に抗して姿勢を保持し続ける必要があるため、常に微弱ながら筋活動を行っています。
そのため、姿勢を保持するための筋肉を抗重力筋とも呼びます。
抗重力筋は日常生活で常に働き続けているため、自然と赤筋線維の割合が増加している傾向にあると考えられてきました。
実際に長期臥床にてまず最初に委縮するのは赤筋線維であり、筋肉別にみていくと抗重力筋の委縮が著しいことが報告されています。
しかし実際は、抗重力筋だから必ずしも赤筋線維の割合が多いとは言えません。以下に、代表的な姿勢保持に関する筋肉の筋線維の割合を示します。
白筋線維 | 赤筋線維 | |
僧帽筋 | 46.3 | 53.7 |
脊柱起立筋 | 60.0 | 40.0 |
腹直筋 | 53.9 | 46.1 |
腸腰筋 | 50.0 | 50.0 |
大殿筋 | 47.6 | 52.4 |
大腿四頭筋 | 58.5 | 41.5 |
ヒラメ筋 | 12.3 | 87.7 |
実際に数値で平均値を確認してみると、抗重力筋だから赤筋線維が多いというわけではなく、白筋線維の割合が高い筋肉も多数あります。
その中で、ヒラメ筋だけは赤筋線維の割合が非常に高く、この比率の高さは全ての筋肉の中で断トツです。これは一体なぜなのでしょうか。
なぜヒラメ筋だけが赤筋線維が豊富か
通常、姿勢制御には足関節戦略が用いられており、身体重心が移動した際は足関節➡膝関節➡股関節の筋肉が順に収縮してバランスを保ちます。
そのため、常に最初に収縮する足関節の筋肉がバランスをとるためには重要な役割を担うことになります。
身体を分節的に考えてみると、足関節でしっかりとバランスがとれていたら他関節は上に乗っておくだけでいいので収縮をあまり必要とはしません。
姿勢保持のために筋肉が収縮し続けていると疲労が蓄積するので、あまり筋活動を必要としないほうが本来は理想的なのです。
そのため、足関節底屈に作用するヒラメ筋だけが異常なほどに赤筋線維が豊富になっているのだと推察できます。
もうひとつの根拠としては、足関節背屈に作用する前脛骨筋も赤筋線維の割合が非常に高くなっている(27.0:73.0)ことも理由として挙げられます。
足関節で姿勢制御をできない場合
足関節に問題が起こり、姿勢制御に足関節戦略が適用できなくなった場合は、おそらく立位姿勢の耐久性が著しく低下するのではないでしょうか。
また、腰が曲がるなどして足関節の直上に他関節を乗せておくことができなくなったら、その分だけ筋活動が多く必要となるので疲労感も強まるはずです。
このように考えると足関節を制御しているヒラメ筋の役割は非常に重要であり、そこに上手く他関節を乗せていくことが姿勢保持には必須といえます。
赤筋線維のほうが硬い
ボディービルダーのように筋肉が大きく隆起している人たちは、いかにも身体が強靭で硬そうに見えます。
しかし実際は、隆起している筋肉は白筋線維の割合が多いので、力を抜いているときに触れてみると筋肉はとても柔らかいのが特徴です。
本当に硬いのは実は赤筋線維のほうで、マラソンランナーのように引き締まった筋肉は赤筋線維が豊富なため、触れてみると筋肉には硬さが感じられます。
実際に自分の身体で確認してみる方法として、ふくらはぎに位置するヒラメ筋と腓腹筋を触り比べてみてください。
前述したようにヒラメ筋は全ての筋肉の中で断トツに赤筋線維の割合が豊富なので、触れると硬さを感じ取れるかと思います。
それに対して腓腹筋は若干ですが白筋線維の割合が多いので、触れると柔らかさを感じ取れます。その差は運動を習慣にしている人ほど顕著です。
姿勢矯正には赤筋線維を鍛えるべき
姿勢を保持するためには、常に筋肉には一定の張力が必要となります。そのためにも筋肉にはある程度の硬さがあったほうが都合がいいわけです。
また、保持のためには持続的な筋収縮が必要となりますので、持久性に優れた筋線維を豊富に持っている必要があります。
それらの条件を満たしているのが赤筋線維であり、姿勢矯正をするためには赤筋線維を鍛えたほうがいいとする理由です。
さらに前述した姿勢制御の足関節制御が可能となるように身体を微調整することにより、疲労しにくい身体を獲得することができるはずです。