座位姿勢の観察方法と立ち上がりの流れについて解説していきます。
正しい座位姿勢について
一般的に正しいとされる座位姿勢は、坐骨結節の直上に肩峰と耳垂がきており、脊椎のS字弯曲が保持された状態を指します。これを坐骨座りと呼んだりします。
坐骨座りは脊椎の弯曲が保持されるため、腰部や頚部への負担が少なく、胸郭の動きを制限することもありません。
支持基底面は殿部後面かから足底の接地部(つま先)までとなりますが、体重の大半を殿部で支えるため、重心線は後方に位置しています。
不良姿勢の代表である仙骨座りとは
座位の代表的な不良姿勢に、骨盤が後傾位となって、仙骨全体で体重を支えている仙骨座りがあります。
骨盤が後傾すると連鎖的に腰椎前弯が減少し、後方に重心線が移動します。移動した分を調整するように、胸椎後弯が増加して体幹上部は前傾します。
頸椎も連鎖的に屈曲してしまいすが、その状態では前方をみることができないので、頸椎上部および頭部を過伸展させて整えます。
全体としては、坐骨座りでは重心線上にきていた耳垂や肩峰が前方に位置しており、いわゆる猫背の姿勢になっています。
仙骨座りで身体のどこに負担がくるか
上から見ていくと、頭部前方位で上位頸椎過伸展となっているので、頭部を伸展させるための後頭下筋群への負担が高まります。
次に胸椎屈曲が増加しているため、胸郭の動きが制限されて浅い呼吸となります。また、肩甲骨が外転位に引っ張られて、菱形筋の負担が増しています。
腰椎では前弯が減少(または後弯)しているため、椎間板内圧の高まりや背筋群の負担が増している状態となります。
基本的に不良姿勢というのは、だるま落としの積み木がずれている状態です。そのため、筋肉で緊張しながらバランスを保とうと働いています。
正しい姿勢というのは、上の積み木が下の積み木にしっかり乗っている状態であり、筋肉の支えをほとんど必要としない状態といえます。
立ち上がり動作の姿勢分析
1.座位姿勢(立ち上がり準備期)
立ち上がるために必要な座位ポジションとして、膝関節が100度以上屈曲していること、骨盤が立っている(坐骨座りである)ことが求められます。
膝関節が伸びていると足部が前方に位置するため、支持基底面が前方に広がった状態となり、立ち上がる際に重心線を膝関節に移動することができません。
また、骨盤が後傾している状態も前方への重心移動を妨げることになるため、骨盤が立っている状態を保持することが大切です。
2.体幹前傾位
座位からお尻を浮かせていくために、体幹を前傾させていく時期です。前傾することで重心は前下方に移動し、膝関節で上半身を支えられるようにします。
その際に、①脊椎屈曲、②骨盤前傾、③股関節屈曲、④足関節背屈といった関節の動きが生じますが、どこかに制限が存在するとスムーズな重心移動が行えません。
姿勢分析をする際は、それらの部位が問題なく動いているかを確認し、重心が前方に移動できているかを確認していきます。
3.立ち上がり動作
実際にお尻を上げて体幹と股関節を伸展させていく時期で、ここでは全身の筋肉を収縮させて立ち上がっていきます。
殿部が離れることで支持基底面が足底のみになり、一気に狭くなってしまうので、離殿時に重心線が支持基底面に入っていない場合は身体が持ち上がりません。
この状態は筋力の弱った高齢者に多く、立ち上がれずにすぐ尻もちをつくような状態として現れます。
その理由として、重心線が十分に前方に移動できておらず、余計に筋力が必要となり、それに見合う筋力が足りず、結果的に立ち上がれなくなっています。
なので、体幹の柔軟性を向上したり、身体の使い方を学習することで重心線をより前方に移すことができるようになることで容易に立ち上がれるようになります。
拘縮などで重心線の移動が困難な患者では、より筋力を増強させるか、補助具を使用して支持基底面を拡げることで対応します。
立ち上がり動作の筋活動としては、主に体幹伸展筋(脊柱起立筋)、股関節伸展筋(大殿筋)、膝関節伸展筋(大腿四頭筋)、足関節底屈筋(下腿三頭筋)を使用します。
これらの筋肉が協調的に働くことで、立ち上がり動作を可能としています。
また、これらの拮抗筋である腹筋群や腸腰筋、ハムストリングス、前脛骨筋の同時収縮にて安定性を高めています。
4.立位姿勢(立ち上がり完了)
立ち上がり時に前方に移動させていた重心線を、体幹伸展や股関節伸展動作で後方に戻していき、支持基底面の中央に調整します。
そうすることで、筋活動の少ない安定した立位姿勢を保つことができます。
通常、姿勢制御には足関節戦略が用いられており、身体が前方に移動した際は足関節背屈筋、膝関節伸展筋、股関節屈曲筋が順に収縮してバランスを保ちます。
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