後十字靭帯損傷のリハビリ治療

後十字靭帯(Posterior Cruciate Ligament:PCL)損傷のリハビリ治療について解説します。

後十字靭帯の概要

後十字靭帯 リハビリ|PCLの位置と走行
後十字靭帯(PCL)損傷 リハビリ|解剖と線維束

後十字靭帯は「大腿骨の内側顆」から「脛骨の顆間隆起後方」に付着する関節内靱帯で、脛骨の後方への偏移を制動します。

膝関節内には2本の靱帯があり、それらが交差して十字に見えることから前方を前十字靭帯、後方を後十字靭帯と名付けられました。

後十字靭帯(PCL)は長さが30–40mm前後、幅が約1cm前後であり、前十字靭帯(ACL)よりも太くて頑丈です。

後十字靭帯(PCL)損傷 リハビリ|MRI

後十字靱帯損傷について

PCLはACLよりも損傷の発生頻度が非常に少なく、太いために完全断裂よりも部分断裂をきたしやすい傾向にあります。

また、ACL損傷と比較してニ次的な半月板損傷や骨軟骨障害をきたす可能性が低いため、PCL単独損傷の場合は第一に保存療法が選択されます。

後十字靭帯は膝で最も負傷しにくい靭帯であり、損傷しても症状が強く現れないので気付かれないこともあるほどです。

PCL損傷は膝屈曲位で脛骨粗面を強打し、脛骨が強制的に後方移動させられることで損傷します。

後十字靭帯の緊張肢位

後十字靭帯 リハビリ|PCLが最大負荷になる角度(屈曲60°前後)

PCLは膝屈曲60度にて最大伸張を示し、膝屈曲0度及び120度で弛緩することが報告されています。

そのため、膝伸展位では関節に動揺は起こらず、階段を上り下りするときなどに膝屈曲60度前後で力を入れると不安定感を訴えます。

日常では階段の上り下り・椅子立ち上がりで60°前後を通過しやすく、不安定感の訴えが出やすい角度帯です。

PCLを切離した場合は、脛骨の後方移動距離が膝関節60〜90度屈曲位で約3倍になるとされています。

検査方法

セルフで見抜くサイン:後方への落ち込み現象

  • 鏡で膝を90°にした時に患側の脛骨粗面が奥に見える(落ち込みの示唆)
後十字靭帯 損傷 テスト|脛骨の後方落ち込み現象

徒手検査:後方引き出し徴候

  • 膝関節90度屈曲位で下腿近位部を保持して前後動揺をみる(後方動揺がみられたら陽性)
  • 落ち込んだ位置から引き出すと前方動揺と間違いやすいので注意する

禁忌・NG動作

  1. 早期からのハムストリングス高負荷(膝屈曲抵抗)
  2. 脛骨が後ろに落ちる姿勢(膝関節屈曲60-90°)での反復動作
  3. 深いしゃがみ込み(屈曲深角度)
  4. 疼痛・腫脹が翌日まで増悪する負荷は段階を下げる(目安0–2/10)

関節可動域運動

PCL損傷 リハビリ|膝窩にタオルを当てた可動域運動※膝窩にタオルを当てると脛骨の後方落ち込みを物理的にブロックできる

筋力トレーニング

後十字靭帯 リハビリ|脛骨後方偏位を抑える大腿四頭筋

脛骨の後方動揺を制動する筋肉として、大腿四頭筋と下腿三頭筋の2つが存在しています。

とくに大腿四頭筋の筋力に関しては、保存療法後のスポーツ復帰の可否に大きく影響するので鍛えることは必須です。

階段で膝の不安定感(ガクガクするなど)を訴える患者では、脛骨の落ち込みを防いだ状態での昇段練習などが有効となります。

保存療法ロードマップ

時期の目安* 目的 やること 避けること(禁忌寄り)
0–2週 炎症コントロール/脛骨後方偏位の抑制 RICE、四頭筋セッティング、SLR(膝伸展位) 深い膝屈曲、ハムストリングス負荷
2–6週 四頭筋強化・可動域の安全拡大 ミニスクワット(0–45°目安)、自転車エルゴ軽負荷、タオル当てROM 開放鎖での膝屈曲抵抗、屈曲60°前後での強負荷
6–12週 機能的安定性・動作再学習 ステップアップ/降段練習(後方偏位を作らないキュー)
バランス(片脚立位→不安定面)
痛み・腫脹が翌日残る負荷の急増
3–6か月 競技動作への移行 直線ラン→変向→ジャンプ着地トレーニング 膝が抜ける感覚があるのに全力動作

*目安。手術の有無・損傷グレード・同時損傷・医師の指示で前後します。


最終更新:2025-08-22