概要
多くの腰痛は1か月以内に軽快しますが、半年以上続く慢性腰痛では腸腰筋・大殿筋・多裂筋の機能不全が互いに影響し合い、痛みの温床になります。
座位時間の長さ→腸腰筋短縮→大殿筋の出力低下→大腿二頭筋や脊柱起立筋の代償過緊張、さらに多裂筋の硬さ・関節拘束が重なる——この流れを断ち切るのがポイントです。
痛みを長引かせるメカニズム
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腸腰筋の短縮(前方牽引)
長時間座位で短縮しやすい。骨盤前傾・腰椎前弯↑を招き、拮抗する大殿筋の活動が落ちる。 -
大殿筋の抑制(殿筋→ハム代償)
殿筋が働かないと**大腿二頭筋(長頭)や脊柱起立筋(後縦スリング)**が代償し、腰背部の張り・膨隆が“結果”として出現。 -
多裂筋の硬さ(セグメント不安定)
多裂筋はインナースタビライザー。一部の椎間関節に拘縮があると、他のレベルに過可動が生じ、椎間板/椎間関節への集中的ストレスに。
まず行う評価(セルフ含む)
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座位時間・姿勢(肋骨前突、骨盤前傾/後傾の癖)
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股関節屈曲テスト(側臥位):股関節を深屈曲するとき、腰椎屈曲が乏しく痛む→多裂筋の拘縮を示唆。
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殿筋活性:片脚ヒップリフトで殿に入るか、ハム・腰に逃げないか。
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腸腰筋の伸張感:Thomasテスト様の姿勢で過度な突っ張りや代償の有無。
介入の優先順位(実践プロトコル)
① 腸腰筋:緊張を下げる(原因の根)
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呼気主導の伸張:腹臥位~片膝立ちランジで骨盤を前に運び、息を吐いて肋骨を収める(腰を反らさない)。
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座位時間の分割:45–60分ごとに立ち上がり、股関節を伸展方向へ“リセット”。
② 大殿筋:主動筋を取り戻す
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ヒップリフト(ドローイン併用)10–12回×2–3
腰反りNG。殿の収縮を先に作り、ハムの過介入を抑える。 -
ヒップヒンジ練習:胸郭を前方へ、骨盤軽前傾で股関節から折る。軽負荷RDLで殿主導を再学習。
③ 多裂筋:硬さを“緩めて使う”
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側臥位リラクセーション:呼気で腹圧を保ちつつ、骨盤を微小に前後傾(痛み0–3/10)。
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バードドッグ(四つ這い):腰椎中間位をキープし、対側上肢・下肢をゆっくり伸ばす。8–10回×2。
重要:脊柱起立筋の張りは結果。揉むだけで終わらず、上記①②③をセットで行うと張りが持続的に低下します。
よくある質問(Q&A)
Q1. まずどれから始めれば良い?
A:腸腰筋の伸張+呼気(肋骨前突を収める)→殿筋活性→多裂の安定化の順が効率的。
Q2. いつ効果を感じる?
A:個差はありますが、毎日5–10分を2–3週間で張りの軽減や動きやすさの自覚が出る例が多いです。痛みが強い日は無理せず量を調整。
Q3. ストレッチを増やせば早く治る?
A:伸ばし過ぎは逆効果。呼吸でコアを効かせながら軽い伸張、その後**殿筋・多裂の“使う練習”**が必須です。
Q4. 医療受診の目安は?
A:しびれ・筋力低下・膀胱直腸症状、夜間激痛、外傷後の痛みは早期受診。慢性でも改善が乏しければ専門家へ。
3分ショートルーチン(毎日)
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口すぼめ呼気 6–8秒×6呼吸(肋骨を収める)
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ドローイン 10秒×5(息は止めない)
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ヒップリフト 10–12回(殿主導)
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バードドッグ 8回/側(腰の反り丸まりゼロ)
最終更新:2025-10-07
