整形外科の画像診断について

整形外科で読影する必要がある画像診断には、①X線写真、②MRI、③CT、④超音波(エコー)の4つがあります。

まずは単純X線写真ですが、一般的にX線写真は骨を見るものですが、筋(水)は白っぽい灰色、脂肪は黒っぽい灰色として抽出されます。

また、筋肉以外にも腱や靱帯、血管も撮影されますが、筋肉と同じ程度の色で抽出されるので鑑別することは困難です。

影を見ているだけなので奥行きがわかりにくく、異常が身体の前部なのか後部なのかを判断することもできません。

単純X線写真を読影するポイントとしては、①骨の配列、②骨の形態、③骨の透明度の3つをチェックします。

上述した画像では、膝関節の内側間隙が狭小化および下腿内弯があり、内反膝(O脚)という骨の配列異常が起きています。

また、大腿骨と脛骨の内側に骨棘があり、骨の形態異常も認められます。

一般的に骨棘は悪いものとして考えられがちですが、実際は支持基底面を拡大することで膝関節内反の抑制に働きます。

変形を起こす関節のほとんどは動揺が強くなっているので、拘縮に関しても全てが悪いというわけではないことに留意してください。

X線写真やCTが骨の評価に優れているのに対して、MRIは筋肉や靱帯などの軟部組織の評価に優れています。

MRIは脂肪組織にある「脂肪プロトン」と、脂肪以外の組織にある「水プロトン」の2種類だけを撮像します。

T1強調画像は脂肪プロトンを、T2強調画像は水プロトンを強調した画像となります。

注意点としては、脂肪はT1強調画像で高信号を示しますが、T2強調画像でもほぼ高信号に抽出されます。

そのため、T1強調画像とT2強調画像の決定的な違いは、水を示す信号の濃度であることに留意します。

腱や靱帯、骨皮質などは脂肪プロトンも水プロトンもほとんど含まないので、T1・T2ともに低信号を示します。

本来は低信号を示す部分に高信号がみられたら、損傷(炎症)や変性の存在を疑うことができます。

上の画像は、肩関節のT2強調画像ですが、棘上筋腱の部分に高信号が認められます。

腱板断裂が存在するかは不明ですが、水が溜まっている時点で腱板損傷が存在していることが予測されます。

MRIは水を映し出すものなので、読影するときのポイントとしては、T2強調画像で水が溜まっている場所を中心に探していきます。

CTはX線管が患者の周りを回転しながら撮影していくため、身体を立体的にとらえることが可能となります。

これは単純X線写真の弱点を克服するものであり、苦手であった長軸方向からの評価もより正確に可能となっています。

CTの画像は「断層」であり「断面」ではないため、画像は厚みを持っており、断面(切り口の表面)ではないことに留意します。

近年ではコンピューターのスペックが上昇したことで3次元画像処理が簡単に行えるようになり、直感的な評価も可能となっています。

MRIと比較すると、CTは骨の状態が詳細にわかるのに対して、MRIは軟部組織の評価に優れています。

また、MRIは病変の質的な評価が可能であり、撮影剤なしで血管画像が得られることも長所となります。

超音波検査の特徴として、誰でも簡単に検査ができますが、検査の精度には技量が、読影には知識が必要となります。

また、他の画像検査と比較して撮影可能な視野が狭いため、ピンポイントに障害を部位を狙う必要があります。

リアルタイムに観察できるので、筋肉や筋膜の滑走状態も含めて確認することができるのは超音波検査のみの強みとなります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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