椎間板の水分を増やす方法について

椎間板は人体最大の無血管組織であり、1度損傷してしまうと修復が非常に難しい組織でもあります。

椎間板は腰椎屈曲などの内圧上昇には強い抵抗性を示しますが、剪断力(前方すべり)や捻転力(回旋運動)への抵抗性は乏しいです。

そのため、バレーボールのアタック動作のように脊椎に強い伸展力が加わると、剪断力にて損傷するリスクが高まります。

本来は線維輪の内層や髄核には神経線維は存在しませんが、椎間板に炎症が生じると炎症性サイトカインが線維輪の内層に侵入し、椎間板性疼痛を引き起こします。

腰痛患者のMRIを撮影すると多くのケースで椎間板の変性が認められますが、それが椎間板性疼痛であるかは確実に鑑別する必要があります。

椎間板性腰痛の場合は、原因レベルの腰部中央に痛みが起こり、左右に拡がるような疼痛領域を示します。

椎間関節性腰痛の場合は、原因レベルの椎間関節に痛みが起こり、腰部中央には痛みがないことが特徴です。

椎間板が原因の痛みというのは治療が非常に難しく、徒手などによる直接的なアプローチを加えることができません。

以前に中学生の女の子を担当したときの話ですが、元々はバドミントン部でスマッシュを打つときに腰痛がある状態でした。

全中が終わったことで部活を引退しましたが、その後は学校の授業を受けていると夕方から腰痛が強くなるという理由で受診していました。

椎間板というのは重力下(内圧上昇)で過ごすことにより徐々に水分が抜けていき、夕方になるとやや潰れた状態となります。

とくに変性している椎間板は水分量が減少しているため、正常よりもクッション性を保つことが難しい状態にあります。

学校の授業は座った状態で身動きがとれないため、それが朝から夕方まで続くと痛みが強くなるのは当然です。

休みの日は内圧が上昇する姿勢を強いられることがありませんので、痛みが起こらないということも特徴的でした。

腰痛を起こさないためにはどれだけ内圧を下げた姿勢をとれるかが重要で、できる限りに休憩をとれるように生活設定していきます。

タイトルに書いた「椎間板の水分を増やす方法」としては、椎間板性腰痛の患者は朝方は調子がいいことを踏まえると、寝ることが効果的などではないかと考えられます。

これはあくまで抜けた水分を戻す方法ではありますが、疼痛をコントロールするためには重要な考え方になりえます。

もしも横になることが難しい場合は、立位で身体を反らすことによち、内圧を低下させることも可能です。

ただし、椎間板変性が剪断力にて生じているケースでは、そこにさらなる剪断力が加わることですべり症を誘発するリスクが高まります。

そのため、あくまで反らすのは痛みがない範囲とし、定期的に水分補給を促すような感覚で行うことが推奨されます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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