呼吸を勉強する上でとても大切な死腔について説明します。
死腔の概要
死腔とは、気道において血液とガス交換を行わないガスの導管部を占める領域を指します。まあ単純に書くと、吸った部分がそのまま出てくるため、肺まで酸素を送れていない空気のことを指します。
専門的には、死腔のことを解剖学的死腔量といい、1回あたりの呼吸で約150mlほどあります。なので、一回の換気で必ず150mlは無駄になるということです。
なぜ死腔が生まれるのか
口から吸った空気を肺まで送ろうとした場合、その全てが肺に送れるわけではありません。もし全てが送れてしまうと、途中の気管なんかが真空(空気がない状態)になってしまいますよね。
そうならないためにも、途中の気管にとどまる空気って必要なんですよね。死腔に残った空気は、基本的には次の呼気で排出されてしまいます。
1回換気量が150mlになると酸素が取り込めない
1回の換気量は約500mlですが、これが150mlまで低下してしまうと呼吸をしているにも関わらず、すべて死腔(ガス交換に関与しない)となってしまい窒息してしまいます。
これがいわゆる「虫の息」です。実際に浅い呼吸を素早く繰り返してみるとわかりますが、続けていたらどんどん苦しくなっていきます。
これは、まったく肺に酸素が取り込めていないからです。
死腔を理解すると換気量の計算はとても簡単
死腔を理解しておくと実際の肺胞換気量の計算はとても簡単です。1回の換気量が500mlの人では、15回/分で合計7,500mlを取り込んだことになります。
しかし、そのうち15回分は死腔量が発生しますので、「150ml×15回」で2,250mlがガス交換に関与していない計算になります。
そうなると、実際に行われた肺胞換換気量は、「7,500ml-2,250ml」で5,250mlになります。
深呼吸は死腔量を減らしている
死腔量は呼吸回数に依存して増えていくことを説明しましたが、それなら死腔量を減らすためには呼吸回数を減らしたらいいんじゃないかと思ったはずです。
ズバリその通りです。ゆっくり深く呼吸することで1回換気量を増やし、かつ呼吸数を減らすことで死腔量を減らす。
これが最も効率のいい呼吸方法であり、いわゆる深呼吸になります。はやくて浅い呼吸は、実際はほとんど酸素が取り込めておらず、とても効率の悪い方法だったんですね。