炎症(時期別)の運動療法について

炎症は大きく3つの時期に分けられ、時期ごとに必要な治療が異なることに留意する必要があります。

また、セラピストに炎症を改善させることはできないため、あくまで炎症の再燃を抑止したうえで治療を行うことが大切です。

1.急性期(0〜3日)

組織損傷から3日後までが急性期の炎症で、この時期の関節操作は炎症を増悪させる原因となります。

そのため、炎症とは関係ない関節や組織のアプローチのみに留めるか、アイスパックなどで熱感が強い部分の冷却に努めます。

痛みを伴う動きは損傷している組織に負担をかけている可能性が高いので、疼痛誘発動作は避けるように患者教育を行うことも重要です。

仕事や試合などでやむを得ずに負担をかける場合は、運動後にアイシングを行うことが有用です。

2.修復期(4〜14日)

組織損傷から約2週間後までが軟部組織の修復期で、この時期はまだ瘢痕組織による癒着・瘢痕化が生じていません。

そのため、この時期は組織の滑走性を維持し、関節可動域制限を予防することが重要です。

炎症がある関節には浮腫が生じており、関節の動きを制限する主因となるため、浮腫を抑えた状態で関節運動は実施すると効果的です。

例えば、弾性包帯を使用して圧迫を加えることで浮腫が軽減できるので、その状態で行うとよいです。

関節運動はあくまで疼痛を伴わない範囲で実施し、炎症を再燃させないように務めるようにします。

3.癒着・瘢痕期(15日以降)

損傷で欠損した組織には補填するための肉芽組織が形成され、続いて線維芽細胞が増殖し、2〜4週後には成熟して瘢痕組織を形成します。

これまでが浮腫によるROM制限が主因だったのに対して、4週以降は瘢痕組織による癒着・瘢痕化がROM制限の主因となります。

癒着した組織に対しては滑走刺激を加え、組織間の滑りを引き出すように治療していくことが必要です。

筋攣縮(防御性収縮)が存在する場合は、先に筋攣縮を取り除くようにし、その後に癒着に対するアプローチを行なっていきます。

おわりに

癒着・瘢痕に関しては、患部に的確な治療が施されていないと、そのまま残存してしまっているケースも多いです。

そのため、過去の怪我を聴取しておくことは重要で、怪我をしたことがある場所に癒着・瘢痕がないかを確認するようにしてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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