2015年の予測から10年──理学療法士をめぐる現在地とこれから

この記事は2015年に執筆したものですが、あれから10年が経過しましたので、現状について再考していきます。

国家試験の合格者は増えたのか?

  • 令和7年度 合格者(ご提示の数値)

    • 理学療法士(PT)11,373人(合格率 89.6%

    • 作業療法士(OT)4,887人(合格率 85.8%

  • 所感:PTの年間合格者は10年前より約2,000人増という見立て。供給規模の高止まりは続いていると考えられます。

理学療法士の給与はどうなった?

  • 平均年収(平均値)約432.5万円
    厚労省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」では、職種区分「理学療法士・作業療法士等」の平均が、月給 約30.09万円+賞与 約71.44万円=年約432.5万円。※PT/OT/ST等をまとめた区分の平均

  • 中央値公的統計では職種別の中央値は原則公表されていません。
    民間の求人・転職サイト等では“年収400万円未満”であることも多く、中央値としては400万円前後である可能性が高い。

  • 平均年収は10年前とほぼ同等の数字であり、右肩下がりだった以前と比較すると横ばいで経過している。

リハ職の“介護スタッフ化”は進んだのか?

  • 介護人材不足は慢性的に継続しており、リハ職が介護業務を部分的に補助する現場は散見される。

  • 一方で、リハ職が主に介護業務を担うという段階までは一般化しておらず、職能としての専門性は概ね維持されている。

これからのPT/OTに求められる実践スキル

  • AIの活用力(実務例)

    • 文献検索・要約:クリニカルクエスチョンに対する素早いEBM下支え

    • 臨床推論の外化:評価所見→仮説→介入→再評価のロジック整備

    • ドキュメンテーション:SOAPやサマリーの抜け漏れ防止と時短

    • 教育・患者説明わかりやすい資料(図解/パンフ)作成。

    • 歩行・転倒リスク等の予測補助スコアや既存モデルの適用・点検。

  • 制度リテラシー:加算要件やアウトカム志向の流れを把握し、“制度語”で価値を説明できること。

  • 可視化と発信:小さくても症例報告・院内発表を継続し、成果の見える化で交渉力を高める。

  • キャリア複線化:病院・訪問・産業保健・教育・研究・自費等を組み合わせたポートフォリオを構築。

報酬の先行きと向き合い方

  • 2015年前後の介護報酬マイナス改定以後も、基本線は効率化・アウトカム志向

  • PT協会から国会議員を輩出することもできたが、報酬アップや待遇面の改善には至らず。近年は候補者の落選も目立つ。
  • 組織選びも重要:職能を尊重し、評価制度が透明な職場は、専門性の発揮・成長に適しており、昇給も望みやすい。

おわりに

2015年に「あと10年で理学療法士の仕事は“介護”になります。」というタイトルで記事を書いた当時、少なからず反響がありました。あれから実際に10年が経ち、振り返ってみると――懸念していたほどには給与水準も専門性も崩れず、想定よりは“持ちこたえている”と感じています。

とはいえ、先行きが明るいと断言できるわけではありません。2040年頃には団塊世代が大幅に減少し、医療・介護ニーズの質と量が変わることで、PTの需要構造が縮小・再編される可能性は現実的です。今後の10年は、その変化に備えて新しいスキルを獲得し、職場内外での役割・ポジションを確立する準備期間だと捉えています。

予測は外れることもあります。しかし、外れるかもしれないからこそ、自分のキャリアを“自分事”として設計し直すことが大切です。臨床の質を磨く、研究や発信を習慣化する、データやAIを使いこなす――どれも「明日から少しずつ」始められる投資です。

10年後も胸を張って「理学療法士でよかった」と言えるように。私自身も学びを続け、現場で価値を出し続けます。読者の皆さんも、それぞれの現場で一歩ずつ前に進んでいきましょう。