皮膚誘導と浅筋膜アプローチ

以前に福井先生の「皮膚テーピング」の本を読んだときに、新しい道が開けたような気がして、とても感銘を受けたことを覚えています。

あまり実践として使うことはなかったですが、浅筋膜へのアプローチを考えていくうえで、この理論に通ずるものがあると今では考えるようになりました。

皮膚テーピングを知るには、「皮膚運動の五つの原則」について理解しておく必要があり、その内容は以下になります。

皮膚運動の原則

この理論の中で重要なのは、「皮膚の動きは筋肉と逆」ということです。

例えば、腰椎を伸展させるときに腰部脊柱起立筋群は短縮しますが、腰部の皮膚は腰部から離れるようにして伸張していきます。

このことを考慮すると、腰椎伸展時に起こる筋・筋膜性腰痛というのは、筋肉や深筋膜の短縮時痛だけでなく、浅筋膜上(皮膚および浅層の皮下脂肪)の伸張時痛であることも考えられます。

上の図は皮膚から骨までの層を示したものですが、皮膚と浅筋膜との間、浅筋膜と深筋膜との間には脂肪が存在します。

そこには血管や神経が豊富に存在しており、膝関節の膝蓋下脂肪体が強い痛みを拾っているのと同様に、疼痛の誘発組織となります。

マッサージをする際に、浅筋膜にも深筋膜にも刺激が入るため、どこにアプローチしているか明確に判断できないといわれたりします。

しかし、皮膚の可動性(すべり)を確かめるような軽い刺激を加えたときに、エコーを確認すると深筋膜は動いていません。

それだけの刺激で関節可動域が改善するようなら、それは浅筋膜上の問題であったと判断することも可能です。

さらに精密な評価とするためには、伸張する方向を決めてから、その前後で動きを確認するとよいです。

先ほどの腰椎伸展を例に挙げると、シワが寄るところ(痛みがある部位)の皮膚を、上下に伸ばしていくようにします。

腰椎伸展時にシワが寄らないようにすることで痛みが軽減するようなら、それは浅筋膜上の問題であった可能性が考えられます。

そこで変化がないようなら、深筋膜や筋肉にアプローチを広げていき、筋・筋膜性疼痛の原因がある層を見つけていくようにしてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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