この記事では、短母指伸筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
短母指伸筋の概要
短母指伸筋は前腕後面に位置する筋肉で、表層は総指伸筋と長母指伸筋に覆われています。
短母指伸筋は長母指外転筋と共に、しばしば過用症候群(オーバーユース)にて腱鞘炎(ドケルヴァン病)を引き起こします。
短母指伸筋腱は手首の部分でタバコ窩の橈側を構成しており、窩には直下には舟状骨が位置するため、舟状骨骨折例ではこの部分に強い圧痛を認めます。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 橈骨神経深枝の後骨間神経 |
髄節 | C7-8 |
起始 | 橈骨体中部の後面、前腕骨間膜の背側面 |
停止 | 母指の基節骨底の背側 |
栄養血管 | 後骨間動脈 |
動作 | 母指のMP関節の伸展、CM関節の橈側外転 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
母指伸展 |
1位 | 長母指伸筋 |
2位 | 短母指伸筋 |
短母指伸筋の触診方法
写真では、手掌を台に接触させた肢位からの母指CM関節の橈側外転運動にて、短母指伸筋腱を触診しています。
短母指伸筋腱は長母指外転筋腱と共に橈骨外側を通過し、母指の基節骨に停止します。
そのため、走行は長母指外転筋に近く、ともに第1区画を通過します。
第1区画は短母指屈筋腱と長母指外転筋腱が通過しますが、約60%の人は2つの腱を完全に分離する隔壁が存在しています。
手根部の断面図
長母指伸筋および短母指伸筋は、長母指外転筋や橈骨神経(浅枝)とともに大菱形骨の橈側部を通過しているのがわかります。
ストレッチ方法
肘関節屈曲・前腕軽度回外・手関節軽度掌屈・尺屈位とし、反対側の手で母指を挟み込んでMP関節を最大屈曲していきます。
IP関節を伸展位に保つことで長母指伸筋が伸張されるのを避け、選択的に短母指伸筋がストレッチできるようにします。
筋力トレーニング
母指の伸展運動に対して、反対の母指で抵抗をかけます。選択的に母指伸筋を鍛えることができます。
マッサージ方法
※図は総指伸筋を取り除いている |
肘関節軽度屈曲・前腕回内位に保持し、一方の手で患者の手を抑え、もう一方の手は手首中央に母指を当てます。
表層は総指伸筋が覆っていますので、深く押圧を加えながら前腕中央を上行していき、マッサージを行っていきます。
関連する疾患
- 短母指伸筋腱断裂
- 橈骨神経麻痺/後骨間神経麻痺
- ドケルバン病
- インターセクション症候群 etc.