石灰性腱炎のリハビリ治療

石灰性腱炎の病態とリハビリ方法について解説していきます。

石灰性腱炎

腱板や肩峰下滑液包に石灰沈着を来す疾患で、単純X線写真で石灰化が認められる場合でも、痛みを伴うのは3割程度とされています。

そのため、単純に「石灰化=肩の痛み」とは結び付けないことが大切です。

石灰性腱炎の特徴として、①激しい痛み、②夜間に強いことが挙げられます。

痛みの発生機序として、腱内の石灰沈着が滑液包に破綻して、滑液包炎を来すことが原因と考えられています。

そのため、急性期には大型の朦朧(もうろう)とした石灰化に対して、慢性期には比較的小さく辺縁明瞭な石灰化を示します。

石灰性腱炎の画像所見

石灰沈着の約半数は棘上筋腱に生じるので、大結節上方に確認できます。

その他の腱板の石灰化は骨頭に重なるため、上腕骨を内旋位や外旋位で撮影することで明らかとなるケースもあります。

石灰沈着の主成分ハイドロキシアパタイトの結晶で、その原因として腱の壊死、血行障害、外傷、代謝障害が考えられていますが、定説はありません。

MRIにおいては、STIR像で石灰化周囲の腱、滑液包、大結節上部の骨髄に炎症を示す高信号が認められます。

上の画像では、棘上筋腱は分厚く肥厚していることが確認できます。

リハビリテーション

石灰性腱炎の原因は腱の壊死や血行障害であるため、治療は基本的に腱板損傷に対するものと同じになります。

具体的には、棘上筋腱を損傷する原因となる肩峰下インピンジメントの改善、夜間の血行障害の原因となる巻き肩の改善が必要です。

肩峰下インピンジメントの原因として、フォースカップル作用の崩れがあり、腱板構成筋よりも三角筋が優位に働くことが挙げられます。

三角筋が優位に働くと上腕骨頭の上方変位が生じ、棘上筋腱が肩峰下にて挟み込まれるように圧迫を受けます。

その状態を改善するためには、腱板構成筋がしっかりと働き、三角筋が優位に働きすぎないようにしながら挙上できることが必要です。

また、肩関節外転時に上腕骨の外旋が不足していると肩峰下と大結節が接近するので、それを避けるために外旋を引き出すことも有用です。

夜間(就寝時)の血行障害の原因として、仰臥位で肩峰が上方にあると肩関節が伸展位となり、鳥口肩峰弓下間隙が狭小化して血流が阻害されます。

その状態を改善するためには、肩関節前面の筋肉(胸筋や肩甲下筋など)の滑走不全をリリースすることが必要です。

姿勢を調整する方法も有用で、肘の下に折りたたんだバスタオルやクッションを入れることで肩関節が伸展しないようにします。

側臥位で眠る場合は患側を上にし、クッションを抱え込むようにして伸展を防ぐ姿勢も有用となります。

炎症が落ち着くことで痛みが自然寛解していく可能性も高いですが、再発しないことが重要なので、可能な限りに問題は取り除くようにします。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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