この記事では、示指伸筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
示指伸筋の概要
示指伸筋は前腕後面の深層に位置しており、表層には総指伸筋が覆っています。長母指伸筋の遠位を走行しています。
人差し指のみを伸展させる筋肉で、示指伸筋腱は総指伸筋腱と共に伸筋支帯の第4区画を通過します。
長母指伸筋断裂に対する外科的治療では、示指伸筋腱を利用した腱移行術が実施される場合があります。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 橈骨神経深枝の後骨間神経 |
髄節 | C6-8 |
起始 | 尺骨の遠位背側面、前腕骨間膜の背側面 |
停止 | 示指の指背腱膜 |
栄養血管 | 後骨間動脈 |
動作 | 示指の伸展、手関節の背屈 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
手指伸展 |
1位 | 総指伸筋 |
2位 | 示指伸筋 |
3位 | 小指伸筋 |
示指伸筋の触診方法
写真では、示指以外の手指を屈曲位に固定した状態で、示指MP関節伸展運動にて示指伸筋腱を触診しています。
他指を屈曲することで総指伸筋腱が蛇行するため、その中で真っ直ぐと第4区画に向かう示指伸筋腱をたどることができます。
伸筋支帯の6つの区画
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前腕の伸筋群は手関節を通過する際に、伸筋支帯により構成される6つの区画内を各筋が通過しています。
- 第1区画:長母指外転筋腱、短母指伸筋腱
- 第2区画:長橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱
- 第3区画:長母指伸筋腱
- 第4区画:総指伸筋腱、示指伸筋腱
- 第5区画:小指伸筋腱
- 第6区画:尺側手根伸筋腱
第1区画は60%の人で2つの腱を隔てる壁が存在しており、狭窄性腱鞘炎を最も引き起こしやすい箇所になります。
総指伸筋腱と示指伸筋腱は同じ区画内に存在しており、示指伸筋腱のほうが深層(掌側)に位置しています。
ストレッチ方法
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肘関節屈曲、手関節掌屈位に保持し、反対側の手で示指を掴んで、示指全体を屈曲方向に誘導していきます。
第3-5指はリラックスした状態とし、屈曲させないように注意します。
筋力トレーニング
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示指の伸展運動に対して、反対の示指で抵抗をかけます。この方法で選択的に示指伸筋を鍛えることができます。
手指伸筋について
手指の伸展に働く筋肉は全て外在筋であり、手指屈筋のように手内在筋が存在しません。ちなみに、短母指屈筋や短小指屈筋は手内在筋です。
グーを握った状態で指を一つずつ伸展させてみるとわかりますが、中指と薬指だけは随意運動にて最終伸展付近まで持っていくことが困難です。
その理由は、中指と薬指には個別に伸展作用する筋肉がないことを意味しています。その他の母指や示指、小指には個別の伸筋が存在します。
手指伸筋には、①総指伸筋、②示指伸筋、③小指伸筋、④長母指伸筋、⑤短母指伸筋の5つが属します。
関連する疾患
- 示指伸筋腱断裂
- 長母指伸筋腱断裂(腱移行術)
- 橈骨神経麻痺
- 後骨間神経麻痺 etc.