筋・筋膜性殿部痛のリハビリ治療

筋・筋膜性殿部痛のリハビリ治療について解説していきます。

殿部痛について

殿部痛は腰痛として表現されたり、または腰殿部痛という言葉でまとめられる傾向にあります。

しかし、疼痛誘発組織を特定していく中で、腰部に痛みがあるか、殿部に痛みがあるかは明確に区別して考えたほうがいいです。

非特異的腰痛症のほとんどは、①椎間板性腰痛、②椎間関節性腰痛、③筋・筋膜性腰痛、④仙腸関節障害の4つに分類されます。

しかし、この中で仙腸関節障害は殿部に痛みが出る障害であり、腰痛とは区別して考えることが大切です。

上半身と下半身の問題は仙腸関節の部分で切り替わるため、殿部痛は腸骨周囲に、腰痛は仙骨周囲にアプローチが必要です。

切り替わる理由として、仙骨から上方に付着する筋肉のほとんどは停止を上方に持つため、疼痛は腰背部に出現します。

腸骨から下方に付着する筋肉のほとんどは停止を下方に持つため、疼痛は殿部や下肢に出現します。

筋・筋膜性殿部痛に関与する筋肉

殿部痛に関与する筋肉は、①大殿筋、②中・小殿筋、③股関節外旋六筋などが挙げられます。

大殿筋の起始は浅部と深部に大別でき、殿部痛には深部から起始する線維が関与しやすいです。

深層に位置する筋肉の多くは関節の安定化に関与するため、疲労が蓄積しやすい傾向にあることが理由でもあります。

大殿筋とともに股関節伸展の主力筋である大腿二頭筋も硬くなりやすい筋肉のひとつであり、両者は仙結節靭帯を介して筋連結しています。

上半身の重心が前方にある場合に、上半身の重心を後方に戻すために骨盤を後継(股関節は伸展)させるように緊張します。

中・小殿筋は股関節外転の主力筋ですが、立脚期に股関節が内転すると、内転を止めるために外転筋が過剰に緊張します。

その積み重ねが結果的に股関節外方の痛みを誘発することに繋がります。

リハビリテーション

筋・筋膜性疼痛の原因は付着部の牽引ストレスであり、牽引ストレスを高める原因に筋肉の緊張増大(攣縮)や筋膜の癒着が挙げられます。

治療方法として、ここでは「組織リリース」という便利な言葉で統一していますが、主には攣縮や癒着を取り除くマッサージになります。

具体的には、問題のある筋肉の全体を触診しながら組織間の癒着を見つけ、必要に応じてリリースしていきます。

筋肉の緊張が強い場合は、筋自体を押すようにしてダイレクトマッサージを加えていき、過度な緊張を改善します。

次に重要なのは、硬くなった原因を特定し、その動きや姿勢をできる限りにとらないようにして再発を防ぐことです。

例えば、大殿筋が原因の場合は股関節伸展制限が疑われるため、股関節屈曲の主力筋である腸腰筋のリリースが有効となります。

また、股関節伸展のモビリティを引き出すように自他動でストレッチを行っていきます。

日常生活では、椅子からの立ち座り、階段の上り、物を持ち上げる動作などで大殿筋を使用するために痛みを誘発しやいです。

そのため、患側の大殿筋にできるだけ負担をかけすぎない方法などを指導していおくことも有効となります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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