トリガーポイントの定義と特徴
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トリガーポイント(TrP):筋内に触知される索状硬結(taut band)上の限局性の圧痛点。
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診断的所見の代表
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圧痛と関連痛(押した部位と離れた領域に痛みが再現)
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触診や針刺激で起こる局所攣縮反応(local twitch)
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触診時のジャンプサイン(思わず身を引く反応)
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分類の一例:活動性TrP(自発痛あり)/潜在性TrP(押すと痛い)/衛星TrP(一次TrPの影響で生じる二次点)。
“トリガー(引き金)”は、圧迫でふだんの痛みが“再現”されることに由来。
痛みの広がり(関連痛)
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筋ごとに出やすい部位と関連痛パターンがある。
例)咬筋:顎関節・耳前部・歯痛様の関連痛、開口障害や関節雑音の訴えが多い。 -
筋線維の一部は深筋膜に連続し、筋・筋膜の機能不全が広域の運動連鎖に波及し得る。
主な治療選択肢(概略)
どの方法でも安全確保と再現性のある評価→再評価が原則。単独より運動療法・セルフケア併用が有利。
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トリガーポイント注射
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目的:疼痛軽減と局所循環改善。局麻薬±生食など。
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注意:出血傾向、感染、**気胸リスク領域(上胸部・肩甲周囲)**は解剖を熟知し慎重に。
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ドライニードリング(鍼)
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局所攣縮反応の誘発→痛みの短期軽減が報告されることがある。
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注意:抗凝固療法・皮膚感染・妊娠部位など禁忌/慎重適応を確認。
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徒手療法:虚血圧迫(漸増加圧法)
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100–800g程度で30–120秒持続圧 → 抵抗が“ほどける”感覚で中心へ角度を微調整。
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抵抗が再出現した層・方向で再び静止圧。3–5回を目安に“それ以上の変化が乏しくなる”所で終了。
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ストリッピング(起始-停止方向に沿った圧滑走)を併用して探索と解除を繰り返す。
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ストレッチ&モビライゼーション
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温熱→軽い収縮→静的/PNFストレッチの順が安全。強痛は避ける。
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咀嚼筋なら舌・頸部の姿勢介入、下肢なら股・足部のアライメントも並行。
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運動療法・生活介入
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負荷管理(過用の是正)、姿勢・作業動作の最適化、睡眠・ストレスの調整。
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等尺→等張→持久へ段階的に。再発予防はここが要。
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エビデンス概況:注射/鍼/徒手とも短期の痛み軽減は中等度の示唆。長期成績は運動・教育の併用で向上しやすい(疾患・部位により差)。
施術の安全チェック(抜粋)
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禁忌・注意:抗凝固薬内服、出血傾向、局所感染・皮膚病変、感覚障害部位、妊娠部位、重要臓器近傍。
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インフォームドコンセント:手技の目的・限界・一過性増悪(押痛・筋肉痛)・合併症を事前説明。
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客観評価:NRS/VAS、関連動作、可動域、圧痛計などでBefore/Afterを必ず記録。
すばやく使える実施メモ
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探索:索状硬結を見つけ、**“患者の痛みと一致”**する点を特定。
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圧の方向:筋線維軸へ基本、反応乏しければ斜め/深層を微調整。
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量:不快はOK・痛みはNG。翌日反応が48時間以上強いならやり過ぎ。
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セルフ:温罨+軽運動→フォームローラー/ラクロスボールで30–60秒持続圧×数点→軽ストレッチ。
よくある質問(Q&A)
Q1. ただの“コリ”と何が違う?
A. TrPは限局性圧痛+関連痛+索状硬結で特徴づけられ、離れた部位の痛み再現が鍵です。
Q2. 強く長く押すほど効きますか?
A. 過剰圧は二次的防御収縮や炎症を招きます。適量(100–800g, 30–120秒)で反応を見ながらが原則。
Q3. 一度取れば再発しませんか?
A. 負荷・姿勢・睡眠・ストレスが整わなければ再発しやすい。運動療法と生活調整を併用しましょう。
Q4. どれが一番効く治療?
A. 個体差が大きく、“これ一択”はない。安全+再現性ある評価→多面的介入が実用的です。
Q5. 鍼や注射は怖いのですが…
A. 徒手中心でも改善は見込めます。必要時に低侵襲手技を段階的に検討すればOK。
最終更新:2025-10-04

