まず押さえる要点
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多くの筋筋膜性疼痛は “働きすぎの筋” と “働いていない筋(サボり筋)”の共存 が原因。
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こり(筋実質の疲労)→深筋膜の硬化→牽引ストレスによる微細損傷で鋭い痛みへ。
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対処は ①深筋膜を穏やかにゆるめる(リリース) → ②サボり筋を“代償なく”再学習 の順。
なぜ強く痛むのか(メカニズムを簡潔に)
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使い過ぎの筋=当初は「だる重い」程度(骨格筋は痛覚感受性が低め)。
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周囲の深筋膜まで硬くなる → 弾性喪失 → 牽引で微細損傷 → 痛覚感受性が高い膜が痛む。
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サボり筋が働かない限り、使い過ぎは続き再発。
サボり筋を見つけるコツ(共同筋の視点)
同じ動作を担う共同筋を対にして観察。働きすぎが目立つとき、その相棒がサボっている可能性大。
代表的な“働きすぎ ↔ サボり筋”ペア
肩甲帯/肩
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上方回旋:僧帽筋上部 ↔ 僧帽筋下部
兆候:挙上時に肩甲骨ごと持ち上がる(いかり肩) -
挙上と外転:三角筋中部 ↔ 棘上筋
兆候:外転で骨頭が上方滑り→肩峰下インピンジ -
内旋:大胸筋 ↔ 肩甲下筋
兆候:内旋時に骨頭が前方へすべる -
挙上時の代償:肩甲挙筋過緊張 ↔ 僧帽筋上部低活動(なで肩・下方回旋位)
体幹・骨盤
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腰椎伸展:脊柱起立筋/大腰筋 ↔ 多裂筋
兆候:ロードシス+腰背部の板状の張り -
骨盤後傾:ハムストリングス ↔ 腹筋群(特に下部・外腹斜筋)
兆候:スウェイバック、座位で骨盤が落ちる
股関節
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伸展:ハムストリングス ↔ 大殿筋
兆候:殿筋萎縮・伸展でハムが攣る(スウェイバック)
※逆パターン:大殿筋過緊張 ↔ ハム弱化(ロードシス) -
屈曲:TFL・大腿直筋 ↔ 腸腰筋
兆候:屈曲で股関節が内旋しやすい -
外転:TFL・中殿筋前部・小殿筋 ↔ 中殿筋後部
兆候:外転動作で内旋・屈曲が混じる
膝・足部
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膝伸展:外側広筋 ↔ 内側広筋
兆候:膝蓋骨の外偏位・外側での軋轢音 -
膝伸展(別パターン):ハム過活動 ↔ 大腿四頭筋低活動(スウェイバックの歩行)
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足関節背屈:長趾伸筋 ↔ 前脛骨筋
兆候:背屈で足趾が過伸展
介入の順番(実務フロー)
Step 1:深筋膜リリース(痛みを増やさないやり方)
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「圧迫+ゆっくり伸張」を90–180秒保持(コラーゲン繊維の粘弾性に合わせる)。
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痛みが強い部位は避け、関連ラインの遠位(例:脊柱起立筋が強痛→まず腓腹筋・TFLなど)から入る。
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原則「痛みは出さない」。痛み=微細損傷部へ過負荷のサイン。
Step 2:サボり筋の“代償なし”活性
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例)棘上筋:側臥位・肩30°屈曲位から軽荷重外転(肩甲骨は挙上させない)。
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例)僧帽筋下部:鏡で肩甲骨の下制+後傾をフィードバックしながら上肢挙上。
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例)多裂筋:四つ這いの対側上下肢挙上保持(脊柱起立筋の過緊張が出ない負荷で)。
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例)内側広筋:パテラセッティングをリズミカルに(遊脚期の素早い立ち上がりを意識)。
Step 3:動作再学習(屋根を直す)
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ヒップヒンジ(股関節主導)
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肩甲帯の上方回旋=下部僧帽筋・前鋸筋の協調
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歩行:過回内/ラテラルスラストの是正(必要時はテーピング・インソール)
よくある落とし穴と対策
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“揉むだけ”で終わる:一時的に軽くても原因が残る。必ず活性→動作学習まで。
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活性時に働きすぎ筋も一緒に入る:フォームを分解、可動域と負荷を下げる。代償が出ない設定が最優先。
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痛みの強い直押し:炎症・微細損傷を助長。ライン遠位からの間接アプローチを。
ミニプロトコル(例:肩のこり+外転痛)
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肩甲挙筋・大胸筋・三角筋中部の穏やかなリリース(各90–120秒)。
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棘上筋活性(側臥位・肩30°屈曲位→小可動域外転、痛み0–3/10)。
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僧帽筋下部+前鋸筋協調(壁スライド+プラス)。
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生活動作の指示:挙上=肩甲骨の下制・後傾を先に→上腕挙上。
Q&A
Q1:強く押した方が早くゆるみますか?
A:いいえ。深筋膜には低負荷・持続刺激が適します。強圧は微細損傷を悪化させやすい。
Q2:ストレッチだけで十分?
A:リリース+活性+再学習の三位一体が原則。ストレッチ単独では再発しやすいです。
Q3:どれくらいで変化が出る?
A:局所痛はその場で軽減することも。動作の変化は2–4週の反復で定着が見えやすいです。
Q4:家では何をすれば?
A:1部位90秒の穏やかな自己リリース→サボり筋の低負荷エクサ(痛み0–3/10)→日常の動作意識(ヒップヒンジ/肩甲帯セット)。
最終更新:2025-10-08