筋肉の正しい揉み方について解説

ほとんどの理学療法士は毎日のように筋肉を揉んでいると思いますが、正しい揉み方について理解している人は少数ではないでしょうか。

正しいとは何ぞやという話になりますが、そもそも筋肉にアプローチするのはどういう状況かというのを解説していきます。

まずは圧倒的に多いのが疼痛に対してですが、そもそも骨格筋というのは疼痛感受性が弱い組織であり、ほとんどの痛みの原因ではありません。

例外としては、浮腫・薬物などの科学的刺激、筋痙攣や物理的原因による阻血・虚血では疼痛を感じることになります。

しかしながら、そういった理由が明確な場合は臨床的に少なく、ほとんどは単純に硬いのをほぐす感覚で揉んでいるのではないでしょうか。

ここがまずは大間違いであり、適当に揉んで筋線維を押しつぶしても、何となく刺激があって血流が良くなるだけで改善には至りません。

骨格筋の疼痛感受性は弱いと書きましたが、実際に筋肉を押すと強い痛みを訴える患者は多いじゃないかと疑問に思ったはずです。

それは骨格筋が痛いわけではなく、実際に強い痛みを感じているのは表層の「深筋膜」であり、深筋膜は疼痛感受性が非常に強い組織です。

筋肉を揉むという行為が効率的に深筋膜を緩めることにつながるかというと、揉むことでは不十分と言わざるを得ません。

深筋膜を緩めるためにはいわゆる筋膜リリースが有効であり、簡単に書くと軽い圧迫と伸張を加えた状態を2〜3分ほど保つようにします。

強い痛みを伴う刺激では防御性収縮が起こるため、あまり痛みのない範囲の刺激で、滑りの悪い部分をゆっくりと伸張してください。

深筋膜をリリースすることができたら、次は骨格筋を揉んでいきますが、単純に筋肉を揉むと筋線維を押しつぶすことになります。

強く筋線維を押しつぶすと損傷して揉み返し(炎症)を起こしますし、それで身体の状態が改善していくことはありません。

骨格筋に対するアプローチというのは、筋肉が滑走しやすいように調整することが重要であり、周囲との癒着を剥離することが必要です。

そのためには、個々の筋肉をしっかりと掴めるように指を筋間(組織間)に押し込んでいき、分離するようなイメージで揉んでいきます。

ここまでが正しい筋肉の揉み方(緩め方)であり、これらの作業が完了してから必要に応じてストレッチングなどは行うようにしてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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