慢性的な痛みや機能障害を抱えている患者の中には、筋肉に脂肪変性が生じている場合も少なくありません。
筋肉に脂肪が浸潤する機序はまだ明らかではありませんが、長期にわたって使用できていないことがひとつの原因となっています。
例えば、脚にギプスをはめていたせいで筋肉が萎縮した場合などに、筋肉細胞が脂肪細胞に置き換わるということが知られています。
臨床的には、腱板構成筋に脂肪変性が生じているケースが多く、筋のアンバランス(拮抗筋の過緊張)や断裂が影響していると推察されます。
上のMRI画像(T2像)では、棘下筋の一部に脂肪変性が認められ、筋萎縮も生じていることが確認できます。
筋の脂肪変性は不可逆的な変化であるため、大切なのは発生の予防であり、すでに変性があるなら進行の予防が不可欠です。
具体的には、定期的に筋肉を使用すること、必要に応じて筋のアンバランスを改善することが必要です。
腱板構成筋と同様に脂肪変性が生じやすい筋肉として、腰部の多裂筋があります。
上のMRI画像では、腰多裂筋に萎縮が生じており、さらに一部は脂肪変性が生じていることが確認できます。
腰多裂筋は腰椎伸展に作用しますが、深層線維は腰椎のより細かな動きに関与し、腰椎の安定化に貢献しています。
その機能が障害されてしまうと、腰椎の支持性が失われてしまい、腰椎に椎間板変性が生じてしまう原因になります。
慢性腰痛症の患者の多くに多裂筋の脂肪変性や萎縮が認められるため、こちらも発生を予防することが何よりも大切であるといえます。
具体的には、定期的に筋肉を使用すること、座位姿勢で腰椎伸展位となるように整えることが必要です。
フラットバックのように腰椎の前弯が乏しいケースでは、将来的に椎間板変性や多裂筋の萎縮が生じる可能性が高いです。
そのため、早い段階から予防的な運動や姿勢調整をしていくことが求められます。