筋・筋膜が関係する疼痛というのは、基本的に筋肉の停止部付近に痛みが起こります。
理由は単純で、停止部にある骨が主に動くからであり、そちらに強い牽引力が加わることになるからです。
例えば、ハムストリングスがタイトな場合は、坐骨結節(起始部)に痛みを訴えるよりも膝裏(停止部)に痛みを訴えるケースが多いです。
このことを考慮して、痛みがある部位に停止を持つ筋肉はなにかを想像しながら触診していくことで疼痛誘発組織は見つけやすくなります。
起始と停止が紛らわしい筋肉もあり、脊柱起立筋などは腰側ではなく背中側が停止側になるので、しっかりと理解しておくことが必要です。
イレギュラーなパターンとして、停止部が固定されているときに筋肉が収縮すると、むしろ起始部に強い牽引力が加わります。
生活上で最も多いのは立位時の腓腹筋で、足関節底屈が制限されるため、立位や歩行時に起始部である膝裏に痛みが誘発されやすいです。
以上のことから、痛みがある部位ばかりを揉んでもあまり良くならないのは、そこに原因が存在しないからです。
さらに筋線維の一部は深筋膜に入り込んでいることから、筋肉に問題が起きると深筋膜を通じて遠く離れた場所まで問題が波及することになります。
このように「疼痛がある場所」と「原因のある場所」は違うということが、筋・筋膜性疼痛の治療を難しくしています。
問題を解決するためには、解剖学の知識と障害部位を感知できる触診力が必要であり、どちらが欠けてもいけません。
触診が最も大事だというセラピストもいますが、個人的には「知識のある手にこそ神は宿る」と考えています。
どちらが上ということはありませんが、勉強したことを臨床に活かせることが重要なので、常にイメージを持ちながら取り組んでみてください。