結帯動作とは、着物の帯を後ろで結ぶ動きを指しますが、しばしば肩関節の障害で動作制限が起こります。
結帯動作制限の主因は「棘下筋の拘縮」なのですが、なぜ硬くなるのかを理解しておくと治療を実施するうえで非常に役立ちます。
肩の痛みの原因で多いのは腱板損傷と肩関節周囲炎(五十肩)ですが、とくに腱板損傷では棘上筋腱が部分断裂を起こしやすいです。
次いで棘下筋腱が断裂しやすいのですが、棘上筋腱と棘下筋腱は強く連結しているため、ひとつのユニットとして考えられることも多いです。
上の画像は三角筋を取り除いた解剖図ですが、棘上筋腱と棘下筋腱が連結していることがよくわかります。
筋線維が断裂すると炎症が起こりますが、そうすると治癒過程に伴って瘢痕化が生じ、結果的に拘縮して伸張性を失います。
棘下筋は上方の横走線維と下方の斜走線維に分けられますが、主に障害を受けるのは棘上筋腱にちかい横走線維です。
横走線維は肩関節下垂位での内旋運動で伸張され、さらに肩関節が30度伸展位で最も伸ばされることがわかっています。
肩関節が伸展すると骨頭は前方に偏位するので、骨頭上方にちかい線維ほど伸張されてしまうことになるわけです。
高齢者では腱板の部分断裂は一般的であり、屍体を用いた調査では、高齢者の半数以上に大なり小なりの損傷を認めたとしています。
腱板断裂の急性期では痛みを伴いますが、炎症が沈静化していくに従って痛みは治まっていき、最終的に瘢痕化といった後遺症が残ります。
このことから、棘上筋腱や棘下筋腱は障害を受けやすいことが推察されるため、柔軟性や筋出力は確認しておいてください。
重いものを持つような仕事をしている人では、しばしば炎症を繰り返して硬くなっていますので、伸張性を高めることが重要となるわけです。
具体的な治療方法としては、患者に仰臥位をとってもらい、施術者は肩関節を軽度伸展位に保持します。
その状態から上腕骨頭を内旋させていくことで伸張できるため、無理のない範囲でストレッチングしていくとよいです。