翼状肩甲の概要
翼状肩甲(winged scapula)とは、手を挙げたときに肩甲骨の内側縁が胸郭から浮き上がり、翼のように見える状態を指します。
主な原因は長胸神経の損傷による前鋸筋の麻痺ですが、その他の神経麻痺や筋疾患、拘縮によっても起こります。
主な原因
前鋸筋(長胸神経)麻痺
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最も頻度が高い
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原因:テニスのサーブ・ゴルフスイングなどの急激な腕の振り抜き動作、添い寝での長時間圧迫、重いリュックの長時間使用など
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受傷機転が明確なことが多く、原因特定は比較的容易
斜角筋隙での長胸神経圧迫
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胸郭出口症候群(TOS)の一種
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腕神経叢の通過部位のうち斜角筋隙のみが長胸神経を圧迫しうる
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進行性に悪化することが多く、肩甲背神経や肩甲上神経にも麻痺が波及する場合がある
僧帽筋(副神経)麻痺
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副神経(XI脳神経)またはC2–C4頚神経の麻痺
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肩甲骨内側縁全体が浮き上がるが、前鋸筋麻痺と異なり軽度で広範
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外転動作で顕著になる(前鋸筋麻痺では屈曲時)
三角筋・棘下筋などの短縮
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三角筋短縮 → 肩関節外転拘縮
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棘下筋・小円筋短縮 → 肩関節外旋拘縮
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可動域制限により肩甲骨が代償的に浮き上がる
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)
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常染色体優性遺伝だが、突然変異例も多い
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初期症状:表情筋力低下、上肢挙上困難、肩甲帯筋萎縮
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0〜65歳で発症するが、多くは思春期までに発見
発生機序
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肩甲骨を胸郭に引き付ける主な筋:前鋸筋・大菱形筋
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長胸神経麻痺で前鋸筋が機能しなくなると肩甲骨内側縁が浮き上がる
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さらに肩甲背神経まで麻痺すると大菱形筋の緊張も失われ、肩甲骨下角が大きく浮き上がる

原因別の鑑別ポイント
| 原因 | 検査方法・特徴 |
|---|---|
| 長胸神経麻痺 | 上肢を屈曲させる、または壁に両手をついて体を前傾させると内側縁が浮き上がる |
| 副神経麻痺 | 上肢を外転すると内側縁全体が浮き上がる/僧帽筋の萎縮・筋力低下あり |
| 斜角筋隙圧迫 | 上肢屈曲で下角が特に浮き上がる/モーレーテスト陽性 |
| 筋の短縮 | 肘90°屈曲・体側固定で肩関節を内旋すると肩甲骨が浮き上がる |
| 筋ジストロフィー | 血液検査で逸脱酵素(GOT, GPTなど)上昇/左右対称性の筋萎縮 |
Q&A
Q1. 翼状肩甲の最も多い原因は?
A. 長胸神経麻痺による前鋸筋の機能不全が最も多いです。
Q2. 副神経麻痺と長胸神経麻痺の見分け方は?
A. 長胸神経麻痺は屈曲時に内側縁が浮き、副神経麻痺は外転時に内側縁全体が浮くのが特徴です。
Q3. 翼状肩甲が筋ジストロフィー由来かどうかは?
A. 血液検査で逸脱酵素値を確認し、左右対称性で進行性の場合は疑います。
最終更新:2025-09-17



