肩関節の下垂位外旋の関節可動域を改善するためのリハビリ方法

肩関節周囲炎(五十肩)や腱板損傷などのリハビリを実施する際に、肩関節の下垂位外旋が制限されている患者は非常に多いと思います。

1st(ファースト・ポジション:肩関節下垂位・肘関節屈曲90度)の外旋可動域が制限されている場合、肩を動かしたときに激しい痛みが生じたり、夜間時痛が出現したりと日常生活に支障をきたします。

そのためにも、1stでの肩関節外旋可動域は可能な限りに改善させ、早期の疼痛軽減を目指していくことがセラピストには求められます。

外旋可動域が制限されている原因としては、筋肉の過緊張(とくに肩甲下筋)や関節包の拘縮、周囲靭帯の拘縮(とくに烏口肩峰靭帯)が挙げられます。

では、どのようにして動きを改善させていくかですが、私がよく実施する方法として、①筋肉のマッサージ、②関節包の伸張、③反復性筋収縮の三つを順番に行っています。

以下にその具体的な方法について記載していきます。

1.筋肉のマッサージ

はじめに患者には側臥位(患側上部)をとっていただき、施術者(私)は肩甲骨外縁から親指を押し込んでいき、肩甲下筋をほぐすようにしてマッサージを加えていきます。

肩甲下筋は触れられる部分が非常に限られているため、マッサージを行えるのは外縁の一部のみですが、出来る範囲でほぐしていきます。

外旋制限には広背筋や大円筋、大胸筋などの過緊張(攣縮)も関与しているため、緊張が強いようなら必要に応じてそれらの筋肉もマッサージをしていくように対応します。

2.関節包の伸張

次に関節包の伸張ですが、ここでは患者の体位を仰向けにし、施術者がアプローチしやすいように治療側の肩関節をベッドの端になるように近づいてもらいます。

患者の多くはベッド上から肩関節が浮いているため(上腕骨の前方偏位)、それを上から真下に押すようにし、上腕骨を後方に押し込んでいきます。

ここはかなり強めに押し込んでいく必要があるため、施術者は肘を伸ばして体重をかけながら実施していくとよいです。その際に肩甲骨と上腕骨の遊び(緩み)を確認していきます。

ほとんどの場合は遊びが非常に乏しい状態となっていますので、片方の手は上腕骨を後方(ベッド面)に押し込み、もう片方の手は肩甲骨を前方(上方)に引き出すようにします。

グイグイと動きを出すように施術をすることで関節包が伸張できるので、痛みに耐えられる範囲で実施します。関節包の伸張は痛みを伴うことが多いので、事前の説明を忘れないようにお願い致します。

3.反復性収縮

最後に反復性筋収縮ですが、これは仰向けの状態から1st(肩関節屈曲0度・肘関節屈曲90度)にて、肩関節を内旋させるように指示します。

その動きを軽い徒手抵抗を加えながら20回ほど反復させます。感覚としては肩関節内旋の筋力トレーニングをする要領ですが、抵抗は非常に弱くすることが大切です。

もうひとつのポイントは痛みのない範囲で外旋させたポジションから内旋運動を実施することです。例えば、下垂位外旋が20度まで可能なら、外旋20度のポジションから内旋運動を実施します。

反復性収縮を実施する理由としては、筋肉は軽い筋収縮を行うことで緊張が落ちるといった特徴を利用しています。とくに肩甲下筋は触れられない筋線維が多く、マッサージのみでは全体の緊張を落とすことが困難です。

そのため、反復性収縮を用いることで肩甲下筋の緊張を落としていくわけです。なるべく外旋位から始める理由も同様で、とくに外旋位から働く筋線維のほうが可動域制限に関与するので、そこから開始したほうが効果的に落とせるからです。

②(関節包の伸張)と③(反復性収縮)は外旋の関節可動域が改善するまで交互に繰り返していき、緊張が抜けるまで実施していくことが大切です。

おわりに

肩関節周囲炎の発生初期(凍結進行期)は痛みが非常に強く、肩関節周囲筋の緊張を落とすことができずに外旋可動域を改善できない場合も多いですが、痛みのピークを過ぎた拘縮期では改善が望めます。

おそらくここで紹介した方法が最も簡単で誰でもすぐに実践できると思いますので、外旋の可動域制限を改善できずに悩んでいる方はぜひ一度試してみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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