肩関節外側の痛みの原因とリハビリ治療

肩関節外側に起こる痛みの原因とリハビリテーションによる治療方法について解説していきます。

①肩峰下インピンジメント(腱板損傷)

肩関節外側の痛みで最も多い障害が肩峰下インピンジメントであり、肩関節を挙上する際に棘上筋腱が挟み込まれることで発生します。

肩峰下インピンジメントが起こる原因は大きく分けて2つで、ひとつがフォースカップル作用の破綻です。

肩関節の外転運動は、インナーマッスルの棘上筋とアウターマッスルの三角筋が共同収縮して実現しています。

それが棘上筋の機能不全などによって三角筋が優位になると、骨頭が上方偏位して肩峰下インピンジメントを起こします。

治療方法としては、棘上筋の筋出力を高めるトレーニングや、優位となっている三角筋のリラクゼーションが必要です。

小胸筋が緊張して肩甲骨が前下方に崩れている場合も多いため、リラクゼーションにてアライメントの修正が必要なことも多いです。

周囲の状態を整えたら、正常な動きに誘導しながらの自動介助での肩関節外転を繰り返していきます。

もうひとつの原因として、肩関節の下方関節包(関節陥凹)の縮小があります。

正常の肩関節は下方関節包がたわんだ状態であり、外転する上腕骨頭が潜り込めるような広いスペースがあります。

しかし、肩関節周囲炎(五十肩)が起こると関節陥凹は著しく縮小し、骨頭が潜り込めずに上方に押し出されてインピンジメントを起こします。

治療方法としては、上腕骨頭を徒手的に下方へ滑らせる関節モビライゼーションを行い、縮小した関節包を伸張していきます。

肩峰下インピンジメントは肩関節外転60〜120度の範囲で起こるため、挙げてしまった後よりも、挙げてる途中が痛いことが特徴です。

肩関節は水平伸展位のほうが発生しやすく、衝突時はボリボリとした軋轢音が感じられます。

②肩関節拘縮(関節包の縮小)

肩関節外側痛の原理

肩関節の関節包は後方から下方部が拘縮しやすく、拘縮が存在すると上腕骨頭が潜り込めずに挙上制限が生じます。

最終挙上域では関節包に伸張ストレスが加わりますが、その時に伸ばされる後方から下方部の知覚を支配するのが腋窩神経です。

腋窩神経を通して侵害刺激は脊髄から脳へと伝達されますが、別の支配部位と誤認されることがあります。

その別の支配部位というのが肩関節外側であり、それが結果的に外側の痛みを訴える原因となるわけです。

治療方法としては、拘縮している関節包の後方から下方部を関節モビライゼーションを用いてストレッチしていきます。

肩峰下インピンジメントは肩関節外転60〜120度の範囲で痛みを起こしますが、関節包の伸張痛が原因の場合は外転の最終域で痛みが生じます。

関節包以外にも筋肉の短縮(屈曲時に広背筋の短縮で制限など)も原因として多いので、チェックしておくことも大切です。

③筋膜性疼痛:SBAL

肩関節外側の痛みに関与しやすい筋膜として、SBAL(スーパーフィシャル・バックアーム・ライン)があります。

この筋膜上に問題を起こしている場合は、僧帽筋上部線維や三角筋、前腕伸筋群に圧痛が認められ、重度の場合は手背にしびれを伴います。

僧帽筋上部線維に過度な緊張が存在すると、肩甲骨が挙上して肩峰が上方に傾く「いかり肩」となります。

いかり肩も肩峰下インピンジメントを起こす原因となるため、僧帽筋上部線維や肩甲挙筋を緩めることが必要です。

また、SBALが常に緊張している状態にあると徐々に三角筋は拘縮していき、肩関節を外転させて下ろすときに収縮時痛を起こします。

筋膜性疼痛は受傷機転がないことが多く、疼痛は日によって波があり、長期にわたって有している場合が多いです。

治療方法としては、筋膜上に圧痛点や筋膜の滑りにくさが確認できるため、徒手圧迫を加えながら前後左右と斜めに動かしていきます。

マニピュレーションを実施して3〜4分ほど経つと筋膜の硬さがとれて滑りがよくなり、圧痛が半減することを確認できます。

そこで徒手圧迫を解除し、2日ほど筋肉痛(炎症)が起きることを伝えて治療は終了とします。

④石灰沈着性腱板炎

石灰沈着性腱板炎

石灰沈着性腱板炎とは、腱板にリン酸カルシウム結晶(石灰)が沈着して炎症をきたした状態をいいます。

主に棘上筋腱や棘下筋腱に発生し、症状は肩の強い痛み、夜間痛、関節可動域の制限などが起こります。

単純X線画像にて腱部に石灰化(白く写る)が認められるため、見落とすことは少ない疾患です。

治療方法としては、炎症が落ち着くまでは棘上筋腱への負担をなくし、安静を保つことが大切です。

⑤腋窩神経麻痺

腋窩神経

腋窩神経は、大円筋と小円筋の隙間(四角間隙)を通過して上腕骨外科頸を囲むように走行し、上腕骨の後面で前枝と後枝に分かれます。

前枝は三角筋に枝を出しながら前方に至り、後枝は小円筋に筋枝を出した後に上外側上腕皮神経に移行します。

腋窩神経は四角間隙で圧迫を受けやすく、麻痺を起こすと三角筋や小円筋の筋力低下に加えて、肩関節外側の知覚障害を起こします。

治療方法としては、四角間隙を構成している大円筋や小円筋、肩甲下筋、上腕三頭筋長頭の過度な緊張を取り除いてきます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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