整形外科の外来リハビリで担当することが多い肩関節疾患は、①腱板損傷、②筋・筋膜性肩痛、③五十肩(肩関節周囲炎)の3つです。
これらの疾患を評価・治療していくうえで、ぜひとも知っておいてほしいことを簡単にですが記載していきます。
まずは腱板損傷ですが、腱板で最も断裂しやすいのは「棘上筋腱」であり、断裂する原因は肩峰下インピンジメントです。
肩峰下インピンジメントが起きる原因は、①挙上時に肩関節外旋が不十分、②猫背(胸椎後弯の増強)、③下方組織の短縮です。
腱板損傷を発生する多くのヒトに上肢前方(DFAL/SFAL)のタイトがあり、①と②を引き起こしています。
そのため、治療では硬くなっている胸部や肩周囲の筋膜をほぐすようにし、十分な肩関節外旋と胸椎伸展が出現するようにします。
次いで筋・筋膜性肩痛ですが、発生する多くのヒトに上肢後方(DBAL/SBAL)のタイトが認められます。
具体的には、僧帽筋上部や肩甲挙筋、菱形筋、棘上筋、棘下筋などが硬くなりやすい傾向にあります。
肩関節の後方関節包が短縮している場合は、結帯動作や水平内転運動で肩関節前方の痛みを引き起こします。
なぜ後方組織が短縮していると前方に痛みが生じるかについては、トランスレーション理論を知っておく必要があります。
例えば、肩関節水平内転時に後方組織が短縮している場合は、上腕骨頭は前方変位し、前方でインピンジメントを起こします。
このように骨頭というのは非短縮側に押し出されてしまうので、治療では疼痛側ではなく、短縮側を伸ばすような治療が必要となります。
前述した上肢前方が硬くなるタイプでは、水平外転時に肩関節後方に痛みを訴えることがありますが、そこには前方組織の短縮が関与しています。
最後に肩関節周囲炎ですが、多くの場合は肩周囲筋の緊張はあまり高くなく、関節包を中心とした炎症症状が起こっています。
とくに前方関節包の炎症と拘縮が強く、肩関節外旋の動きは重度に制限され、その他の動きも全て制限されることが特徴的です。
肩関節周囲炎が発生する原因は不明ですが、炎症が強いうちは積極的なアプローチは控え、拘縮が完成してから関節包を伸ばすようにします。
炎症が落ち着くまでに4〜12ヶ月を要するとされていますが、経験として、糖尿病がある患者のほうが消炎するまでの期間は長く感じます。
臨床では、ここで述べた3つの肩関節障害を鑑別できるようにし、そこさえ押さえられたらほとんどの肩痛に対応できるはずです。
ここで紹介した疾患の詳細は、疾患別のリハビリ方法という記事に掲載しているので、そちらもぜひ参考にしてみてください。