胸鎖乳突筋の概要
頸部外側の表層大筋。頭位変化で浮き出やすく、頸椎の骨には付着しません。
片側収縮で「同側側屈+反対側回旋」。両側収縮で「下位頸椎の屈曲+上位頸椎の伸展(前突位)」を生じます。
頭部固定下では努力性吸気の補助筋として胸郭を挙上。長時間の上向き作業や追突などの急激な後方伸展は過緊張・損傷リスクになります(むち打ち)。
基本データ
| 項目 | 内容 |
| 支配神経 | 副神経(CN XI)が運動支配、C2–C3(頚神経叢)が固有受容・痛覚を担う |
| 髄節 | 運動は脳神経支配のため該当なし/感覚はC2–C3 |
| 起始 | 胸骨頭:胸骨柄上縁/鎖骨頭:鎖骨内側1/3前面 |
| 停止 | 側頭骨乳様突起、後頭骨上項線外側部 |
| 栄養血管 | 後頭動脈、上甲状腺動脈 など |
| 主な動作 | 同側側屈/反対側回旋/両側で頸部屈曲・上位頸椎伸展(前突)/努力性吸気 |
| 筋体積・線維長 | 体積 約36.6 cm³、線維長 約12.6 cm(指標値) |
| 速筋:遅筋 | 約65:35(指標) |
運動貢献度の目安
| 動作 | 主に関与する筋 |
| 頸部 側屈 | 胸鎖乳突筋、斜角筋群、脊柱起立筋、板状筋群 |
| 頸部 回旋 | 胸鎖乳突筋(反対側)、板状筋群(同側)、深頸回旋筋群 |
※EMGや姿勢により寄与は変動します。臨床上の参考として使用してください。
触診方法

- 姿勢:座位。頭部を軽く反対側へ回旋すると筋腹が浮き出る。
- 触れ方:胸骨切痕〜鎖骨内側の間から走る二頭(胸骨頭・鎖骨頭)を識別し、母指と示指で二指つまみで筋腹を追う。
- 注意:頸動脈洞(胸鎖乳突筋前縁深部)への強圧は避ける。しびれ・めまい・悪心が出たら直ちに中止。
ストレッチ方法

- 伸ばしたい側の肩を軽く下げる。
- 頸を伸展し、反対側へ側屈、頭部は伸ばしたい側へ回旋(右を伸ばすなら:伸展+左側屈+右回旋)。
- 20〜30秒を2〜3回。痛みが出る角度は避ける。
胸骨頭を重点に伸ばす場合は伸展角度をやや増やすと感じやすいことがあります。
筋力トレーニング

- サイドフレクション等尺性:タオルを側頭部に当て、5秒×5回から。痛みがない範囲で。
- 回旋等尺性:頬に手を当て、反対方向へ軽く押し合う。左右各5秒×5回。
- 前突改善:深頸屈筋(チンタック)を併用し、胸鎖乳突筋の過活動を抑える。
トリガーポイント(TP)

- TPの位置により関連痛は耳介・側頭部・顔面、または肩・前胸部に放散する
- 関連記事:胸鎖乳突筋(SCM)トリガーポイント要約
関連しやすい病態
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先天性筋性斜頚(胸鎖乳突筋腫瘤)
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副神経障害
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慢性呼吸器疾患での努力性吸気増大
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頚性頭痛・平衡感覚の不調が関連として報告される場合あり(鑑別要)。
注意:先天性筋性斜頚は自然軽快例も多い。強圧マッサージは禁忌。改善しない場合は画像・可動域・筋短縮の評価を含め医療機関で検討。
よくある質問(FAQ)
Q1. 右の胸鎖乳突筋を伸ばす首の向きは?
A. 伸展+左側屈+右回旋が基本。20〜30秒、痛みのない範囲で。
Q2. むち打ち後に前頸部が張るのは?
A. SCMや斜角筋の過活動・圧痛点が関与しやすい。急性期は安静・段階的リハ、神経症状や強い眩暈があれば受診。
Q3. ストレッチでめまいが出たら?
A. 即中止。頸動脈洞過敏や椎骨動脈系の問題を鑑別。無理な伸展・回旋は避け、医療機関で評価。
Q4. 前突頭を直すには?
A. 深頸屈筋のチンタック、胸椎伸展、肩甲帯後退の姿勢再教育を併用。SCMの単独ストレッチだけでは再発しやすい。
Q5. 努力性吸気での役割は?
A. 頭部固定下で胸骨・鎖骨を挙上して胸郭を広げる補助筋。呼吸リハでは横隔膜優位化を図り過活動を抑える。
最終更新:2025-10-12
