高齢者で下肢のしびれを訴える場合に、最初に疑われる疾患に「腰部脊柱管狭窄症」があります。
脊柱管狭窄症は脊柱管(椎孔)が狭くなって脊髄(馬尾)を圧迫している状態を意味しますが、広義には椎間孔で神経が圧迫している場合も指します。
そのため、椎間孔型は厳密には脊柱管狭窄による症状ではありませんが、ほぼ全例で併発しているので圧迫箇所の鑑別を要します。
次いで重要なのが狭窄を起こしている原因ですが、主に以下が考えられます。
- 椎間板膨隆(圧潰)
- 終板の骨棘
- 黄色靭帯や後縦靭帯の肥厚
- すべり症
- 椎間関節の肥厚や炎症
- 腰椎前弯の増強 etc.
腰部に問題を起こす患者というのは、①腰椎屈曲型(動くときに腰椎から屈曲しやすいタイプ)、②腰椎伸展型(腰椎の屈曲が出にくいタイプ)の2つに大きく分類できます。
上述した原因の1〜3は腰椎屈曲型に生じやすく、4〜6は腰椎伸展型に生じやすくなっています。
腰部脊柱管狭窄症の特徴として、腰椎伸展位になると症状が悪化し、屈曲位になると症状が寛解します。
一般的に狭窄症は腰椎屈曲型に起こりやすく、そのようなケースでは保存療法での改善がほぼ期待できません。
リハビリで治せる可能性があるのは腰椎伸展型であり、筋・筋膜の拘縮や腹筋群の筋力低下が原因で腰椎前弯が増強しているケースに限られます。
受傷機転が明確な患者では、椎間関節の炎症(腫脹)がある場合もあり、そのようなケースでは消炎とともに寛解することもあります。
腰椎伸展型でもすべり症が主因となっている場合は、徒手的に戻すことは不可能なので改善させることは困難です。
臨床感としてはリハビリで治せるのはごく一部ですが、それでも良くなる場合もあるので評価してからしっかりと治療を行ってみてください。