この記事では、腕橈骨筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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腕橈骨筋の概要
腕橈骨筋は前腕前面外側に位置する筋肉で、brachium(腕)とradius(橈骨)から名前は構成されています。
橈骨神経に支配される唯一の屈曲筋として肘関節屈曲に作用し、前腕を走行する他の筋肉とは違い、手関節の動きには関与しません。
腕撓骨筋は肘関節伸展位で起始と停止を結んだ線上に肘関節屈伸軸が一致するため、筋出力(屈曲トルク)が生じず、屈曲筋として活躍できません。
また、前腕の回内外のポジションで作用が変化し、回外位では回内方向に、回外位では回内方向に作用し、いずれも中間位に戻す働きがあります。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 橈骨神経 |
髄節 | C5-6 |
起始 | 上腕骨の外側顆上稜、外側筋間中隔 |
停止 | 橈骨の茎状突起の撓側面 |
栄養血管 | 橈骨反回動脈 |
動作 | 肘関節の屈曲(回内位)
前腕の回内(回外位→中間位)、前腕の回外(回内位→中間位) |
筋体積 | 83㎤ |
筋線維長 | 27.0㎝ |
速筋:遅筋(%) | 60.2:39.8 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
肘関節屈曲 |
1位 | 上腕二頭筋 |
2位 | 上腕筋 |
3位 | 腕橈骨筋 |
4位 | 長橈側手根伸筋 |
※前腕を中間位に保持する機能もありますが、回内や回外への貢献度は高くありません。
腕橈骨筋の触診方法
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腕橈骨筋は肘関節伸展位からの筋出力(屈曲トルク)が生じにくく、有効な収縮を発揮することができません。
そのため、筋収縮を確認する際は肘関節を90度屈曲した状態から、さらに屈曲方向に力を入れてもらうことで収縮を触知します。
屈曲位からの収縮では腱部が隆起しますので、視診でも容易に確認することができます。
腕撓骨筋の上腕付着の遠位には長橈側手根伸筋が付着しており、肘関節に及ぼす作用も非常に似ています。
そのため、鑑別には手関節橈屈・背屈時の収縮の有無を確認します。
ストレッチ方法
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座位にて肘関節軽度屈曲位、前腕最大回内位で手背をベッドに置きます。
体幹を回旋しながら体重を上肢に移動していき、前腕の橈側が伸ばされるようにストレッチングしていきます。
筋力トレーニング
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バーベルを肩幅の間隔で持ち、肘関節を屈伸します。
腕橈骨筋を効果的に働かせるために、肘関節を90度から145度の範囲で動かすようにします。
筋効率が高い腕橈骨筋
腕橈骨筋は一つの骨の遠位端から起始し、他の骨の遠位端に停止する唯一の筋肉になります。
そのため、大きなテコの作用を活用でき、力強く効率のよい運動が可能となります。
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フォースアームが短くなるほどに重りを持ち上げるための力が大きく必要となり、逆に長くなるほどに少ない力で持ち上げられます。
腕橈骨筋の場合は、このフォースアームが長いために力の効率がいいわけですが、動かせる範囲は短くなります。
橈骨筋のように力に有利な筋肉を「shunt muscle」、上腕二頭筋や上腕筋といった瞬発性の高い筋肉を「spurt muscle」と呼びます。
前者は負荷のかからない無抵抗の動きにはあまり関与せず、負荷のかかる緊急時に力を発揮するといった特徴があります。
そのため、必然と筋線維の割合も速筋線維が多いといった特徴がみられます。
トリガーポイントと関連痛領域
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腕撓骨筋のトリガーポイントが外側上顆付近に出現すると、関連痛は肘周囲に生じます。
腕撓骨筋の筋腹にある場合は、前腕〜手指に痛みが放散します。
アナトミートレイン
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腕撓骨筋はSBAL(スーパーフィシャル・バックアーム・ライン)の筋膜経線上に位置する筋肉になります。
関連する疾患
- 橈骨神経麻痺
- 筋皮神経麻痺 etc.
撓骨神経麻痺と筋皮神経麻痺
腕撓骨筋は橈骨神経支配のため、上腕骨骨幹部骨折などにより撓骨神経麻痺が生じると、腕撓骨筋の麻痺が生じます。
しかし、肘関節屈曲には上腕二頭筋や上腕筋といった強力な筋肉が存在するため、屈曲運動にはあまり問題は起きず、下垂手や下垂指が主な障害となります。
反対に、筋皮神経に麻痺が生じると上腕二頭筋や上腕筋といった強力な肘関節屈筋に麻痺が生じるため、屈曲力は非常に低下し、腕撓骨筋の重要性が増すことになります。