腰椎分離症のリハビリ治療

腰椎分離症のリハビリ方法について解説していきます。

腰椎分離症の概要

腰椎分離症は、腰椎椎弓の関節突起間部の疲労骨折が原因で発生し、分離のほとんどは第5腰椎に生じます。

初期では尾側に亀裂が入ったような状態ですが、ここで適切な治療が行われなかった場合は骨折が拡大し、最終的に腰椎が完全に分離します。

分離部を放置したままにしていると偽関節(分離したまま)となってしまい、二度と元には戻りません。

腰椎分離症の好発年齢は12〜17歳ですが、スポーツ選手では20歳以降でも発生する場合があります。

痛みは腰椎の伸展動作にて椎間関節に負荷がかかることで誘発され、さらに側屈を加えることで左右のどちらに問題があるかを鑑別ができます。

訴えとしては、激痛ではなく鈍痛である場合がほとんどで、障害のある椎間関節に圧痛を認めます。

腰椎分離症の癒合率

腰椎分離症は時期によって癒合率が大きく変化するため、患者がどの段階にあるか把握することが重要です。

初期の腰椎分離症(亀裂)はX線写真では判断できないため、疑われる場合はCTを撮影することで明確にすることができます。

CTでは、比較的に初期より淡い骨折線がみられ、進行期になると明かなギャップを認め、さらに進行すると骨硬化や分節化が認められます。

MRIでは、初期より椎弓根付近に輝度変化(浮腫)が認められるため、最も早期診断に有用とされています。

腰椎分離症は発生初期なら保存療法で治癒しますが、骨硬化が存在すると癒合することはなくなります。

そのため、MRIやCTで進行度合いを確認しながら、医師の指示のもとに治療方針を決定していくことが大切です。

腰椎分離すべり症

腰椎分離症の約80%が両側性といわれており、両側性腰椎分離症の約80%が腰椎分離すべり症に進行するとされています。

片側性腰椎分離症の場合は、すべり症に進行するケースはほとんどありません。

分離したとしても成長期が終わるとともに痛みは消失していくため、成人後の分離症は生活に支障をきたさない場合がほとんどです。

しかしながら、すべり症は将来的に腰部脊柱管狭窄症の原因となるため、できる限りに分離させないことが重要となります。

分離症の身体的特徴

分離症を起こしやすいヒトの特徴として、股関節屈筋のタイトがあります。

股関節屈筋が硬いと股関節伸展が制限され、代償的に腰椎が伸展してしまい、腰椎の椎弓根にストレスが加わります。

また、胸椎(伸展・回旋)や股関節(回旋)のモビリティが低下していても、腰椎に過度なモビリティを求められる原因となります。

そのため、隣接する関節の動きを獲得することが臨床的に重要です。

リハビリテーション

腰椎分離症が疑われた場合は、コルセットにて腰椎の動きを固定し、骨の修復が完了するまで患部を安静に保つことが必要です。

完全に分離してしまうと二度と自然修復されることはないので、そのことを患者にもよく理解していただくことが大切です。

スポーツを熱心にしている学生では、安静にすることができずに分離を進行させる可能性が高いため、可能なら保護者にも詳しく説明しておきます。

次に、股関節の伸展モビリティを獲得していきますが、まずは硬くなっている組織を徒手的にリリースしていきます。

その後に自主トレーニングとしてストレッチングを指導しますが、その際は腰椎伸展が入らないように注意して行うことが大切です。

まずは大腿直筋のストレッチングですが、うつ伏せになった状態で膝を屈曲し、足首を把持した状態で踵を殿部に近づけます。

大腿直筋に拘縮がある場合は殿部が浮き上がるので、浮き上がらないように注意しながら、程よく伸びている状態で1分ほど伸ばします。

次いで腸腰筋のストレッチングですが、片膝立ちになった状態で伸ばしたい側の脚を後ろに置き、反対側の膝を屈曲していきます。

その際に腰椎の過伸展を防止しながら股関節を伸展させていき、ゆっくりと1分ほど伸ばしていきます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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