腰椎椎間板ヘルニアの種類と症状について解説していきます。
この記事の目次はコチラ
①傍正中ヘルニア(後外側型)
最も多い腰椎椎間板ヘルニアのタイプで全体の70〜80%を占めています。
椎間板の後方は後縦靭帯によって保護されているので、真後ろに髄核が飛び出すことは少なく、ほとんどはその傍から飛び出すことになります。
その状態を傍正中型ヘルニアと呼んでおり、方向的には斜め後方に飛び出した状態で、L4/L5レベルではL5の神経根を圧迫します。
通常、硬膜内では上位の神経根が前方から並ぶようにして走行しています。そのため、前方に位置するL5が中心に障害を受けます。
②正中ヘルニア(後正中型)
二番目に多い腰椎椎間板ヘルニアのタイプで全体の15〜20%を占めています。
椎間板の後方は後縦靭帯によって保護されていますが、膨隆した椎間板によって後縦靭帯ごと後方へ押し出された状態になります。
後縦靭帯を突き破り、髄核が脱出している場合も多く存在しており、そこからさらにちぎれた髄核が遊離することもあります。
正中ヘルニアでは後方に位置する硬膜を前方から圧迫するような力が加わり、脊柱管が狭窄している場合は馬尾障害をきたすこともあります。
③椎間孔内外側ヘルニア(椎間孔外側型)
発生頻度としては少数ですが、最も症状が強いタイプのヘルニアです。
外側型ヘルニアは神経が最も強く絞扼されるために、神経に炎症が起きやすく、そこに刺激が加わることで激痛を訴えるのが特徴です。
通常、神経を圧迫されて起こるのは感覚障害や筋力低下ですが、神経に炎症が起きている場合は痛みが起きることがわかっています。
L4/L5レベルの椎間板ヘルニアにおいて、傍正中型はL5の神経根が障害されるのに対して、外側型はL4の神経根が障害されます。
④椎間孔外外側ヘルニア(椎間孔外側)
発生頻度としては少数であり、椎間孔内外側ヘルニアと比較して症状が乏しいタイプのヘルニアです。
椎間孔で強く絞扼されることがないため、神経は後方に逃げることができ、あまり強い神経症状はきたしません。
L4/L5レベルの椎間板ヘルニアにおいては、L4神経に障害が現れます。
⑤椎体内ヘルニア(シュモール結節)
一般的に椎間板ヘルニアは後方に突出しますが、稀に椎体内に飛び出していくことがあります。それをシュモール結節と呼びます。
椎体と椎間板の間には軟骨終板が存在していますが、その軟骨終板に亀裂が入り、椎間板内の成分が椎体内に漏れ出すことで起こります。
痛みの性質は椎間板障害にちかく、主症状は腰痛であり、硬膜や神経根を圧迫してはいないので神経症状はありません。
椎間板内圧を高める姿勢で腰痛は悪化し、長時間の座位が困難となるといった訴えが聞かれます。
椎間板ヘルニアの治療について
一般的に腰椎椎間板ヘルニアの治療では、椎間板が突出しているレベルの椎間関節を伸展させる運動が推奨されています。
これは椎間板の後方膨隆などに対しても効果的であり、ずれた椎間板を矯正する効果があると考えられています。
しかし、脱出している重度のヘルニアの場合は、伸展することによって脱出がさらに悪化してしまうリスクがあります。
場合によっては髄核がちぎれて遊離し、脊柱管内で詰まることもあります。
ちぎれることで圧迫がなくなり、症状が楽になるケースもあると考えられますが、リスクについては知っておく必要があります。
基本的には運動をして楽になる方向が組織圧迫をやわらげていると考えられるため、それが治療体操を決定するうえでの指標となります。
前後左右のどの方向に動かしても痛む場合は、あまり動かさずにヘルニアが吸収されるのを待つことが大切です。
伸展運動で痛みが増加する場合は髄核の脱出が疑われますが、髄核は強い吸収反応が起こるために、通常は約3ヶ月ほどで寛解していきます。
それまでに圧迫や炎症などを強めないように生活をデザインし、吸収を促進できるようにアプローチしていきます。