この記事では、腸骨筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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腸骨筋の概要
腸骨筋は股関節を屈曲方向に振り出す主力筋で、骨盤の腸骨内面に付着しており、腸腰筋の中で最も深層に位置しています。
腸骨の前面にあたって折れ曲がり、滑車のようにスライドして動くことが特徴です。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 大腿神経および腰神経叢の枝 |
髄節 | L2-4 |
起始 | 腸骨窩および下前腸骨棘 |
停止 | 大腿骨の小転子の下方 |
栄養血管 | 内側大腿回旋動脈、腸腰動脈の腸骨枝 |
動作 | 股関節の屈曲、外旋 |
筋体積 | 234㎤ |
筋線維長 | 10.0㎝ |
速筋:遅筋(%) | 50.0:50.0 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
股関節屈曲 |
1位 | 大腰筋 |
2位 | 腸骨筋 |
3位 | 大腿直筋 |
4位 | 大腿筋膜張筋 |
腸骨筋の触診方法
座位にて股関節の屈曲運動を行い、大腿直筋の内側で腸骨筋の収縮を触知しています。
腸骨筋は純粋な股関節屈曲運動に作用します。
ストレッチ方法
ベッドに対して斜めに背臥位をとり、片膝を立て、ストレッチ側の下肢をベッド外側に垂らします。
両手で膝を抱え、引き寄せながら股関節を最大屈曲します。
片膝立ちの姿勢をとり、両手は床に置き、体重を前方下肢に移動します。
下肢を屈曲しながら腰椎は前弯しないように留意し、股関節を伸展していきます。
筋力トレーニング
足首に重りを付けて椅子に浅く腰掛け、両手で座面を掴んだ状態から股関節の屈曲運動を行っていきます。
トリガーポイントと関連痛領域
腸骨筋にトリガーポイント(TrP)が存在する場合は、股関節から大腿前方にかけての痛みや股関節の伸展制限が生じます。
腸腰筋のTrPは、急性・慢性の筋肉酷使(過度なランニングやサッカーのキック動作)、長時間の筋肉の短縮、下肢長の不均衡などで引き起こされます。
鼡径部の浅層(腸骨筋の浅層)にはスカルパ筋膜があり、この組織の短縮でも股関節の伸展制限が生じるため、筋膜の制限がないかをチェックしておくことも大切です。
歩行時の筋活動
腸骨筋は遊脚初期(ISw)に働き、この時期は股関節を屈曲させて下肢を振り挙げる動作に働きます。
関連する疾患
- 股関節屈曲拘縮
- 慢性腰痛
- 腰部脊柱管狭窄症
- 思春期脊椎分離症
- 変形性股関節症
- 化膿性腸腰筋炎 etc.
腰部脊柱管狭窄症
腸腰筋に短縮が存在すると、腰椎の代償的前彎を引き起こします。
腰椎前彎が増強すると腰椎は伸展し、脊柱管は狭窄して、脊柱管を通過している馬尾が圧迫を受けることになります。
腸腰筋が原因の腰部脊柱管狭窄症に関しては、保存的治療(リハビリテーション)で改善が期待できます。