膝関節の曲げ伸ばしでズキッと痛みが起こる原因と治療法

変形性膝関節症の患者で膝を屈伸させると膝蓋骨周囲に鋭利痛を訴える場合があります。ここではその原因と治療法について解説します。

まずは膝蓋骨の周囲ですが、大腿四頭筋や膝蓋腱、内・外側縦膝蓋支帯、内・外側横膝蓋支帯、膝関節包などが付着しています。

これらの組織に短縮や癒着、過緊張や萎縮などが起こっている場合、膝蓋骨の位置がずれたり、正常とは異なった軌道を描くようになります。

そうすると前述した膝蓋骨の付着組織や周囲組織(膝蓋下脂肪体)が繰り返される摩擦によって損傷し、膝関節が屈伸する度に擦れて痛みが起こります。

また、膝蓋大腿関節の関節軟骨がすり減ってしまい、膝蓋骨を動かしたときに軋轢音が聞こえるようになります。

どの組織に損傷が起きているかを確かめるためには、膝蓋骨を上下左右や斜め方向に動かしていき、圧迫を加えながら圧痛の有無を確認します。

最も頻繁にみられるのは膝蓋骨外上方の圧痛で、膝蓋骨を内下方に誘導した状態から圧迫を加えることで痛みを誘発できます。

なぜ外上方に痛みが出やすいかというと、内側広筋が萎縮し、外側広筋に引っ張られるような軌道をとりやすいことに由来します。

治療では膝蓋骨の偏位および動きやすさを改善させるために、膝蓋骨を内下方に誘導して外方の組織を伸張していきます。

圧痛部位をマッサージするように刺激を加えていくことで、動きが改善して痛みを軽減することも可能です。

次に萎縮した内側広筋を強化するために、大腿骨外旋位に保持した状態で膝関節の最終伸展運動を繰り返していきます。

その際に大腿内側部にタッピングを加えていくことで筋収縮を促しやすくなるので、筋腹が膨隆するまで伸展運動とタッピングを反復します。

モビライゼーションと筋力強化を実施することで膝蓋骨の動きが改善すると、膝を再度屈伸させた際に痛みが消失します。

もうひとつ起こりやすいパターンとして、膝関節の最終伸展域付近で起こる膝蓋骨内下方の痛みがあります。

これは膝蓋骨内下方の組織が短縮しており、膝蓋下脂肪体が前方に移動できなくなっていることに由来しています。

そのため、膝蓋骨を外上方に誘導して内下方の組織を伸張していきます。

圧痛部位をマッサージするように刺激を加えていくことで、膝蓋下脂肪体などの柔軟性が改善して痛みを軽減することも可能です。

膝蓋骨は他にも大腿直筋の過緊張によって膝蓋大腿関節の圧が高まって痛みの原因となっていることも多い部位です。

その際は大腿直筋や膝蓋腱をマッサージすることでリラクゼーションを図ることにより、痛みを大幅に軽減できるケースもあります。

変形性膝関節症の患者を診る際は、まずは膝蓋骨の動きを確認し、周囲組織に問題がないかを診るようにしてみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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