要点まとめ
-
膝外側痛の“最頻犯”は腸脛靱帯(ITB)と腓骨筋群(長・短腓骨筋)。
-
強い“刺すような”痛みは、深筋膜(腸脛靱帯や筋膜鞘)由来で起こることが多い。筋腹そのものの侵害受容は比較的弱く、痙攣・循環不全・化学刺激が加わると痛みが増す。
-
歩行時の**ラテラルスラスト(外側への膝動揺)や過回内(オーバープロネーション)**が、腸脛靱帯〜腓骨筋ライン(アナトミー・トレインのLateral Line)へ慢性ストレスを与えやすい。
なぜ痛む?(メカニズム)
-
腸脛靱帯は大腿筋膜の外側肥厚で、痛覚感受性の高い深筋膜。ラン・ウォークや下り坂、片脚立位で外側広筋・大殿筋上部線維からの張力を介して張りやすい。
-
腓骨筋群は足の外反・外転で荷重制御を担うため、過回内足や不安定な着地で働き過ぎ→筋膜鞘の摩擦・滑走不全→外側痛へ。
-
ラテラルスラスト(歩行中、膝が外側へガクッと振れる)=内側広筋の収縮タイミング遅延や膝蓋骨外側偏位で起こりやすく、腸脛靱帯〜腓骨筋ラインに負荷集中。
まず評価(セルフ+臨床)
-
圧痛ポイント
-
腸脛靱帯:大腿外側(大転子〜外顆), 腸脛靱帯脛骨付着部(Gerdy結節)
-
腓骨筋:腓骨頭後下方〜外果後方の腱走行
-
-
誘発テスト(代表例)
-
Noble圧迫:膝屈曲30°付近で外側顆上の圧痛増悪→ITB有意。
-
Ober:大腿筋膜張筋〜ITBの短縮。
-
-
動作観察:歩行・スクワットで膝内反・膝の外側崩れ、着地時の過回内、骨盤の左右落ち。
-
除外:外側半月板、外側側副靱帯、近位脛腓関節障害、腓骨神経絞扼など。
治療/セルフケアの流れ
① 痛みを落ち着かせる(負荷管理)
-
ラン・早歩き・下り坂・片側荷重動作を一時調整(痛み0–3/10に収まる範囲)。
-
運動後のアイシング10–15分。
-
炎症期は長時間の強圧ローリングは避け、圧は中等度・短時間。
② 筋膜リリース&ストレッチ(狙いを絞る)
-
腸脛靱帯/腓骨筋ラインの持続圧+伸張(3–5分)
-
体位:側臥位。手掌で**外側大腿〜Gerdy結節、腓骨筋腱走行(外果後方)**を“圧迫しながら軽く牽引”して保持。
-
-
大腿筋膜張筋・外側広筋・殿筋上部線維のストレッチ
-
足底外側・第5中足骨基部周囲の軟部組織軽揉(腓骨筋腱遠位の滑走改善)
③ ラテラルスラストを減らす(機能改善のコア)
-
膝蓋骨モビライゼーション+パテラセッティング(内側広筋を素早く“パッ”と入れる反復)
-
膝蓋下脂肪体リリース(滑走性↑で膝蓋骨の外側偏位と摩擦低減)
-
膝屈曲拘縮の改善(ハム・ふくらはぎ・後方関節包の伸張)
④ 足部戦略(過回内の是正)
-
後足部回外誘導テーピング(載距突起を持ち上げるイメージ)で負荷試験。効果あれば
→ アーチサポート/ウェッジや安定系シューズを検討。 -
短趾屈筋・母趾屈筋、腓骨筋の協調を促すショートフットや足趾グリップ。
⑤ 股関節・体幹の再学習
-
ヒップヒンジ/側方プランク+股外転で大殿筋・中殿筋を強化(骨盤の落ち込み防止)。
-
シングルレッグスクワット(鏡で膝の軌跡を確認):膝はつま先方向、内反しないラインで浅めから。
-
ラン再開は平坦路→距離→スピード→坂道の順で段階復帰。
生活とトレーニングのコツ
-
平地ウォーク中心に切り替え、下り坂・長距離の連日は回避。
-
デスクワーク前後に外側ラインのクイックリリース(1–2分)+パテラセッティング30回。
-
ラン直後はアイシングと軽いストレッチ、翌日に筋膜ケア。
よくある質問(Q&A)
Q1:腸脛靱帯は“伸ばせない”って聞きましたが?
A:腸脛靱帯自体は強靭ですが、付着・周囲の筋膜(TFL/外側広筋/殿筋)の滑走と緊張を整えることで症状は十分改善します。
Q2:フォームローラーは有効?
A:中等度の圧×短時間なら有効です。強痛で長時間は逆効果。外側広筋・TFL・殿筋上部を狙うと良いです。
Q3:テーピングで楽になります。ずっと貼ってOK?
A:痛み期の補助として有用ですが、筋力・協調性の再学習が本丸。併行して殿筋・内側広筋を鍛えて卒業を目指しましょう。
Q4:いつ病院へ?
A:腫脹・熱感が強い、夜間痛、膝崩れ、しびれがあれば受診。外側半月板損傷・LCL損傷・腓骨神経障害などの鑑別が必要です。
最終更新:2025-10-08
