認知行動療法の考え方について解説していきます。
認知行動療法の概要
まず、認知行動療法について超わかりやすく説明すると、正しい知識を学んだり、成功体験を手に入れることで、問題となっている感情を変化させることです。
ちょっと文章にするとわかりづらいので、簡単に図にしてみました。
図のフィルター部分を変化させることで、これまでと同じ出来事(イベント)にも関わらず、その後の考え方や行動がまったく違ってくるということですね。
つまりは、つらい感情を引き起こすのはつらいイベントではなく、頭の中にある認知というフィルターに原因があるということです。
フィルターを変化させるのは知識と成功体験
このフィルターを変化させるために必要なのが「知識」と「成功体験」になります。
知識に関しては、客観的な事実や証拠を持つことが治療においては極めて重要となります。どれだけ主観的な感情を加えて前向きにしても、その効果は長く続きません。
長期間にわたって維持していくためには、変わりようのない事実を知っておくことが大切です。その根拠の強さこそが、フィルターを確固たるものにします。
成功体験については、腰痛の場合を例にして紹介していこうと思います。
腰痛を治療するための成功体験
例えば、ぎっくり腰などを経験している人では腰をかばって前かがみの姿勢をとっている場合があります。
そういう方々には、腰を反らしても痛みは起こらないという成功体験を反復して与えることで、徐々にその恐怖心を克服していくことが可能となります。
NHKの「腰痛治療革命」という番組では、1回3秒の体幹伸展運動を定期的に行い続けることで、慢性的な腰痛を持つ70名のうち32名に改善効果があったと紹介しています。
成功体験を積み重ねていくことで、これまで脳が「この動作をしたら痛い」と敏感に反応していた部分が消失し、結果的に痛みが緩和していくことになります。
理学療法士の皆さんは認知行動療法を知ってるようで知らない人が多いと思いますが、慢性腰痛症の治療においてはGradeAを獲得している効果的な方法なのです。
認知行動療法と従来の心理療法との違い
従来型の心理療法は、深層心理などをもとにする精神分析が主流であり、セラピストは聞き役に徹することが基本でした。
しかし、認知行動療法ではセラピストが積極的に具体的なアドバイスを患者にしていくといった関わり方をしていくのが大きな違いのひとつとなります。
そのため、心理療法のように治療が長期化せず、1回の治療時間ごとにテーマをひとつずつ解決していくといった即効性の期待できる治療法となっています。
具体的には、痛みに関する重要度の高いテーマを挙げ、それを解決するための方法を患者とセラピストが互いにディスカッションしながら見つけていくといった作業が必要になります。
また、治療と治療の間にはホームワークを課すようにして、患者自身が主体的に取り組んでいくことが治療効果を上げるためには重要です。
認知行動療法の頻度や時間についてですが、認知というフィルターを変化させる必要があるため、そこには徹底した治療が不可欠となります。
オーストラリアの病院では、薬や手術でも改善しない重度の腰痛に対して、1日8時間のカウンセリングと運動を3週間繰り返すプログラムで大きな成果をあげたと報告しています。
現行のリハビリテーションの提供時間内ではほぼ不可能ですが、これらのエッセンスを意識的に取り入れることは治療効果を上げるために有用となります。