足関節捻挫のリハビリ治療

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足関節捻挫のリハビリ治療について解説していきます。

足関節捻挫の概要

足関節はスポーツで最も障害しやすい部位のひとつで、足関節捻挫はスポーツ障害全体の15〜25%を占めます。

内反捻挫と外反捻挫に分類されますが、そのほとんどは内反捻挫であり、足関節の外側靱帯(主に前距腓靱帯)が損傷します。

受傷後は足関節周囲に痛みや腫れが生じ、重度の場合は数日後に内出血で足が変色したり、足をつけて歩くことが困難となります。

足関節の構造について

足関節は、①距腿関節、②距骨下関節、③横足根関節(ショパール関節)の3つから構成される複関節です。

距腿関節は下腿骨(脛骨と腓骨)と距骨から成る関節で、脛骨下端の内果と腓骨下端の外果の間に距骨が収まっています。

外果は内果よりも10㎜ほど長いため、距腿関節は外側のほうが側方安定性は高いことが特徴です。

足関節捻挫|内反捻挫が多い理由

しかし、立位時の重心は足関節中心よりも内側を通過するため、足関節は基本的に外反方向への力が働いている状態となっています。

そこで足関節内側には外反を制動するための三角靭帯(内側靭帯)が発達しており、側方安定性を高めています。

一方、内反運動は内果が短いために骨制動に乏しく、外側靭帯も内側靭帯ほど発達していないために靭帯制動も乏しくなっています。

そのため、足関節は内反方向のほうが動かしやすく、可動範囲も広くなっています。(参考可動域:内反30度/外反20度)

足関節の外側靭帯(LCL)について

足関節の外側靱帯は、以下の三つの靱帯の総称になります。

  1. 前距腓靱帯(ATFL)
  2. 後距腓靱帯(PTFL)
  3. 踵腓靭帯(CFL)

各靱帯の厚さは、前距腓靱帯が約2㎜、踵腓靭帯と後距腓靱帯が約6㎜となっており、前距腓靱帯が最も脆弱な靱帯になります。

前距腓靱帯は足関節底屈位で、踵腓靱帯は中間位から背屈位で、後距腓靭帯は背屈位で緊張します。

捻挫は足関節底屈位での内反強制で生じることが多いため、底屈位で緊張して動きを制動する前距腓靱帯が最も損傷されやすくなります。

重症の場合は踵腓靱帯まで障害されることもありますが、足関節背屈位で緊張する後距腓靱帯まで損傷することは稀です。

靭帯損傷の程度分類

捻挫における靱帯損傷の程度分類は、Ⅰ度が微細断裂、Ⅱ度が部分断裂、Ⅲ度が完全断裂とするのが一般的です。

しかし、足関節の内反捻挫は複数の靭帯が損傷されている可能性があり、その損傷箇所で予後が変わるため、独自の分類があてられます。

分類 内容
GradeⅠ ATFLまたはCFLの微細損傷あるいは部分断裂
保存療法が選択される
GrradeⅡ ATFLまたはCFLの完全断裂(単独症状)
保存療法が選択される
GradeⅢ ATFLおよびCFLの完全断裂
保存療法または手術療法が選択される

手術療法の適応

足関節の内反捻挫に対する手術は、上記の分類で「GradeⅢ」の場合に適応となります。

ただし、踵腓靱帯が断裂して足関節に不安定性があっても痛みなくスポーツができる場合もあるため、絶対的な適応とはなりません。

実際には分類よりも患者の状態や希望を優先することが多く、捻挫を何度も繰り返す場合やスポーツ復帰を目指す場合には再建手術が行われます。

受傷直後の対応(RICE処置)

  1. 安静:Rest
  2. 固定:Immobilization
  3. 冷却:Cool
  4. 挙上:Elevation

リハビリテーション

足関節捻挫のリハビリで重要なのは、「疼痛の改善」と「再発の予防」の2つに分けられます。

足関節捻挫を起こしやすいヒトの特徴として、歩行時にCOP(足底中心)後方位または外方位、足関節内反位での蹴り出しが挙げられます。

それらを修正して再発を予防するためには、足関節の背屈および外反の可動域制限を改善することが重要です。

外反が制限されているケースでは、屈筋支帯の硬さがあることが多いので、必要に応じてリリースしていきます。

足関節の背屈制限と傷害発生率は関係性が認められており、背屈可動域が正常の45度から10度下がることで傷害発生率は2.5倍になります。

とくに足関節捻挫の発生は5倍以上になることが報告されており、背屈の可動域を保つことは臨床的にも非常に重要です。

患部の完全な固定は周囲組織の癒着を進行させますので、外側靭帯の延長に留意しながら、足関節の可動域運動も同時に実施していきます。

前距腓靱帯は足関節背屈運動で弛緩するため、損傷後早期から背屈可動域運動は可能であり、反対に伸張させる底屈・内反運動は制限します。

捻挫後に影響を受ける筋肉

足関節捻挫後に痛みが残存しやすい理由として、足関節周囲の筋肉に硬結が形成されてしまうことが挙げられます。

具体的に問題を起こしやすい筋肉とは、①短腓骨筋、②長母趾伸筋、③長趾伸筋、④短趾伸筋があります。

捻挫は治癒したはずなのに足関節の痛みや違和感が残存しているケースでは、まずはこれらの筋肉に硬結や圧痛がないかをチェックします。

患部の固定(装具療法)

受傷初期は損傷した靭帯や筋肉に負荷がかかることを防ぐため、装具やテーピングを使用して患部を固定します。

疼痛発現部位は、若干伸張しているほうが疼痛は緩和しやすいため、安静にしても痛みが治まらない場合は伸張位に保つことも考慮します。

足関節の安定トレーニング

足関節の固定が除去されて、負荷が許可されるようになってからは、不安定な場所でのバランス練習が推奨されます。

方法としては、バランスディスクや不安定板運動などを用いて、視覚を利用しながら感覚の統合を実施していきます。

足関節捻挫は底屈位で受傷することが多いため、スポーツ復帰をするうえでは足関節背屈位での側方安定性を高めるトレーニングが推奨されます。

このような動作を獲得できないまま、スポーツ復帰して再受傷を繰り返すことで、慢性的な足関節不安定症を有している選手も多いので注意してください。

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スポーツ復帰の時期

復帰時期は損傷レベルや治療内容によっても異なりますが、4週以降より徐々に負荷を高めた運動を実施していきます。

医師に確認のうえ、段階的に復帰するスポーツの特異動作(ジャンプ動作やステップ動作など)のトレーニングを開始していきます。

筋力トレーニングとしては、片脚スクワットや片脚カーフレイズなどの負荷を高めた自重運動が効果的です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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