この記事では、長母指屈筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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長母指屈筋の概要
長母指屈筋は前腕前面の深層に位置する筋肉で、深指屈筋と並んで走行し、筋腹は浅指屈筋に覆われています。
短母指屈筋が主に母指MP関節の屈曲に作用するのに対して、長母指屈筋は主に母指IP関節の屈曲に作用します。
そのため、長母指屈筋の筋力を評価する際は、母指IP関節の屈曲力を測定する必要があります。
上腕骨顆上骨折の合併症で多いフォルクマン拘縮は、前腕屈筋群(中でも深層筋群である深指屈筋と長母指屈筋)に障害が起こります。
そのため、手関節は屈曲位、母指は屈曲位、第2-5指はMP関節過伸展位(虫様筋などの影響)、PIP関節・DIP関節は屈曲位となります。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 正中神経の前骨間神経 |
髄節 | C8-T1 |
起始 | 橈骨前面、前腕骨間膜の前面 |
停止 | 母指末節骨底の掌側 |
栄養血管 | 前骨間動脈 |
動作 | 母指のIP関節・MP関節の屈曲、手関節の橈屈 |
拮抗筋 | 短母指伸筋、長母指伸筋 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
母指屈曲 |
1位 | 長母指屈筋(IP関節) |
2位 | 短母指屈筋(MP関節) |
3位 | 母指対立筋(CM関節) |
長母指屈筋の触診方法
写真では、母指IP関節だけの屈曲運動にて、長母指屈筋を触診しています。
手関節掌屈位では長母指屈筋が弛緩してしまうため、手関節は中間位もしくは軽度背屈位で実施します。
ストレッチ方法
ストレッチ側の腕を肘関節屈曲・前腕回外・手関節背屈位として、反対の手で母指を把持します。
そのまま母指を伸展させていくのと同時に前腕回外と手関節背屈を増大させていきます。
筋力トレーニング
母指の屈曲運動に対して、反対の母指にて抵抗をかけます。
手指屈筋(外在筋)について
手指屈筋 | 支配神経 | |
内在筋 | 短小指屈筋 | 尺骨神経 |
短母指屈筋 | 正中神経,尺骨神経 | |
虫様筋 | 正中神経,尺骨神経 | |
外在筋 | 浅指屈筋 | 正中神経 |
深指屈筋 | 正中神経,尺骨神経 | |
長母指屈筋 | 正中神経 |
手指の屈筋は大きく分けて内在筋と外在筋に分類することができます。
手内在筋は、手根骨もしくは手指骨に起始と停止を共に持つ筋肉のことを呼び、それ以外に起始や停止を持つ場合は外在筋とされます。
トリガーポイントと関連痛領域
長母指屈筋にトリガーポイントが存在すると、第1指に痛みやしびれ、チクチク感などが生じます。
アナトミートレイン
前腕屈筋群はSFAL(スーパーフィシャル・フロントアーム・ライン)に繋がっており、指先にしびれが波及する原因になります。
前腕屈筋群には浅指屈筋や深指屈筋も含まれており、それらの筋肉にトリガーポイントが出現すると第3-5指に痛みやしびれが生じます。
このことから、第1指および第3-5指に痛みなどを訴える場合は、SFALの硬さを調べていくことが大切になります。
関連する疾患
- 長母指屈筋腱断裂
- フォルクマン拘縮
- 正中神経高位麻痺(前骨間神経麻痺) etc.