関節拘縮の原因とアプローチ

関節拘縮の原因とアプローチについて解説していきます。

関節拘縮の原因

関節可動域制限を起こす原因には、①関節包、②筋・筋膜、③腱、④皮膚などが影響しています。

アプローチは基本的に表層から行っていくことが鉄則で、筋・筋膜の問題(防御性習熟など)があるのに深部の関節包から治療はできないからです。

そのため、まずは皮膚や筋・筋膜の状態を確認することから始めます。

①皮膚の問題

皮膚が原因で関節拘縮を起こしているケースは多くありませんが、術後や長期の不動によって固まっている可能性も考えられます。

そのため、皮膚に制限があるかは関節の最終域まで持っていき、皮膚の状態やツッパリ感をチェックしてください。

②筋・筋膜の問題

関節拘縮を起こす筋肉の問題は、①筋攣縮、②筋短縮の2つに分けられます。

筋攣縮とは無意識に筋緊張が亢進している状態であり、防御性収縮やこわばり(コリ)などが挙げられます。

例えば、外傷などにより組織損傷(炎症)が生じると、損傷部位に負担が加わらないように筋肉が防御性収縮して関節を動かせないようにします。

筋肉が緊張すると筋内の血管を圧迫して虚血状態となり、血流障害を起こすと発痛物質が放出され、さらに筋肉が緊張するといった悪循環に陥ります。

そのため、問題がない(消失している)のに筋攣縮がある場合には、マッサージなどで緩めることが必要となります。

筋短縮とは名前の通りに筋肉が短縮した状態ですが、関節の不動や長期の緊張亢進などが引き金となって起こります。

筋短縮の原因には、①筋節の減少、②筋肉の線維化の2つがあります。

筋短縮の原理|筋節

筋節は太いフィラメントと細いフィラメントで構成されており、それらが滑走することで筋肉は伸張します。

ひとつの筋節が伸びる限度は決まっているため、筋節が減少すると筋肉は十分な伸張ができずに短縮します。

筋節を増やすためには、筋腱移行部を集中的に伸張させることが重要で、そのためにはストレッチをかけた状態で等尺性収縮を行うことが有用です。

筋腱移行部にはゴルジ腱器官も存在するので、等尺性収縮することでIb抑制が働いて、緊張を同時に和らげることも可能です。

等尺性収縮による筋のストレッチ効果

もうひとつの原因は筋肉の線維化で、筋肉の中でも筋膜はコラーゲンとエラスチンで主に構成されています。

コラーゲンは伸張すると平坦化して伸びますが、コラーゲンが架橋結合していると伸張が阻害されます。

筋膜の線維化(筋膜の滑走不全)に対しては、筋膜リリースや筋膜マニピュレーションが有効で、結合部をほぐすようにアプローチしていきます。

筋短縮の原理|線維化① 筋短縮の原理|線維化②

③関節包の問題

関節内運動(関節モビライゼーション)を用いることで、ROM測定だけではわからない靱帯や関節包の長さを調べることができます。

臨床的には主に肩関節周囲炎で用いることになり、肩関節周囲炎では関節包が縮小するので、関節モビライゼーションにて拡大していきます。

その他にも関節包が縮小する原因はありますが、中には関節包を縮小することで可動範囲を狭めて、関節を守っている場合もあります。

そのようなケースに関節モビライゼーションを行うと、関節の動揺が大きくなり、疼痛や変形を助長させることにもなるので注意が必要です。

関節モビライゼーションを実施するときの注意点としては、痛みがない(少ない)状態で行うことが大切です。

そのためには、関節周囲の炎症が消失しており、関節包よりも表層の問題をすべて取り除いておくことが必要となります。

④靱帯の問題

靱帯は元々が伸張性のある組織ではないので、靱帯が原因で関節拘縮を起こしているケースはそれほど多くありません。

長期の不動などによって固まっている可能性も考えられるので、そのようなエピソードがないかをチェックすることは必要です。

靱帯に制限があるかは関節の最終域まで持っていき、個別に靱帯に触れながら緊張をチェックするようにします。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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