関節を動かした際に痛みが出る原因について解説します。
安定した関節と不安定な関節
痛みのある関節を考えるうえで、安定した関節と不安定な関節の違いを知っておくことは重要となります。
例えば、関節に拘縮が存在していたとしても、関節自体が安定したものならば痛みは発生しません。
運動時に関節に痛みが出る最大の理由は不安定性であり、関節が正常な動きから逸脱することで周辺組織の挟み込み(インピンジメント)を起こし、激しく鋭い痛みが一瞬にして走ります。
不安定拘縮関節の治療方法
肩関節周囲炎では下方関節包の短縮が認められますが、その場合は肩関節外転時に骨頭が上方偏位してインピンジメントを起こします。
関節のどこかに硬さがある場合は、硬さがない反対側に偏位しますので、偏位した側の組織を圧迫して損傷することになります。
私が以前に担当した患者では、肩関節の後方組織が短縮しており、水平内転時に肩関節前方に強い鋭利痛がありました。
治療方法はいたってシンプルで、上腕骨を把持した状態で骨頭を後方に押し出して、短縮している組織をストレッチングします。
肩関節の屈曲角度や押す方向で伸張できる場所が異なってくるので、最も拘縮があると考えられる方向を治療することが大切です。
基本的に治療は1回で完了するものではないので、根気強く集中的に短縮している組織を伸ばすことが必要となってきます。
不安定関節の治療方法
肩関節に多い不安定関節を例に挙げると、棘上筋腱(腱板)損傷にて骨頭の関節窩への求心力が失われた状態があります。
その場合は、アウターマッスルである三角筋のみが作用するため、骨頭が上方偏位してインピンジメントを起こします。
治療方法としては、弱化した筋肉を直接的に鍛えることや、弱化した筋肉や緩んだ組織の機能を代償できる部位を鍛えることが必要です。
おわりに
重度に拘縮している関節でも安定性さえ確保できているなら、動かしても痛みが出ないというケースは臨床でも多く遭遇します。
そこを無理にストレッチングして拘縮を取り除いた場合に、逆に不安定となって痛みが出現することもあるわけです。
そのため、拘縮しているから全て悪いとは考えずに、患者のQOLを優先して治療には取り組むようにしてください。