先日に事故で膝関節を痛めて、1ヶ月ほど経っても階段を昇るときのズキッとした鋭利痛が消えないといった主訴の患者を担当しました。
痛みの場所は膝関節内側であり、段差が高いほどに昇るときの痛みは増し、とくに下腿外旋位で痛みが増すことが特徴でした。
結果から書くと膝蓋下脂肪体の損傷が痛みの原因でしたが、どうして上記の症状が起こるかを簡潔に解説していきます。
まずは、普通に歩くのと階段を昇るのでどこが違うかというと、前者は膝関節伸展位で接地し、後者は膝関節屈曲位で接地する部分です。
伸展位と屈曲位でなにが異なるかというと、膝蓋下脂肪体は伸展位では膝蓋骨下方に貯留するのに対して、屈曲位では膝蓋骨の裏に流れ込みます。
膝関節屈曲位で下肢に体重をかけると、膝蓋骨と大腿骨の間で膝蓋下脂肪体が圧迫され、一瞬の激しい痛みが走ることになります。
次いで、下腿のポジションによる痛みの変化ですが、内旋位では痛みが弱まるのに対して、外旋位では痛みが増強しました。
その理由としては、下腿が外旋すると膝関節外側のスペースが狭くなり、膝蓋下脂肪体は内側に偏位してしまいます。
そうすると痛めている膝蓋下脂肪体への圧がさらに高まり、結果として痛みを増強させることにつながるわけです。
もちろんどの部分の脂肪体を痛めているかで疼痛増強動作は異なるのですが、多くの場合は内側上方を損傷しています。
最後に疼痛再現動作についてですが、膝関節伸展位で膝蓋下脂肪体を膝蓋骨下方に貯留させた状態で行うとよいです。
理由としては、広範囲の脂肪体を触診することができ、損傷している部分を特定することが可能だからです。
これまでの経験上では、それでも触れることができない症例が多いので、膝蓋骨を下方に押し下げて、膝蓋骨の裏に指を挿し込むことでさらに上方の脂肪体へも圧を加えることができるようになります。
前述した患者では、挿し込んで圧迫することにより疼痛再現が可能であり、膝蓋骨の上まで突き上げるような関連痛が出現しました。
最後に治療法について書くと、今回のケースはあくまで膝蓋下脂肪体の炎症が痛みの原因であるため、患部の安静が大切です。
膝蓋下脂肪体は完治までの期間が長いため、患者に不安を与えないようにその旨を説明し、組織が治癒するまで気長に待つようにと伝えます。
積極的な治療法としては、超音波療法や膝蓋下脂肪体のマッサージが有用であり、柔軟性を保つようにアプローチします。
場合によっては、大腿直筋のストレッチングや膝蓋骨のモビライゼーションなども膝蓋大腿関節の圧を軽減することにつながります。
あとは患者の状態に合わせてメニューを組むようにし、膝蓋下脂肪体への負荷をできる限りに減らせるように調整していってください。