頸椎症性神経障害のリハビリ治療

要旨(まずここだけ)

  • 頸椎症は椎間板変性・骨棘・靱帯肥厚などの総称。進行すると**脊髄(頸髄症)神経根(神経根症)**を圧迫。

  • 頸髄症=中枢性麻痺:巧緻動作低下、痙性歩行など。

  • 神経根症=末梢性麻痺:しびれ・感覚低下・特定筋の筋力低下。

  • リハは根治ではなく二次障害の最小化。安全域での可動域保持・筋力/協調性回復・姿勢/作業環境の最適化が柱。


頸椎症の基礎

  • 変性が進むと椎孔(脊柱管)狭窄→頸髄症、椎間孔狭窄→神経根症。

  • 椎間板屈曲ストレス↑→変性→骨棘・靱帯肥厚は「守るための代償」だが、結果として狭窄を助長。

神経障害の型

  • 正中型:脊髄を中心に圧迫。両側・多髄節性になりやすい。

  • 傍正中型:椎間孔手前の根を片側性に圧迫。

  • 椎間孔型:椎間孔内で単一根を圧迫(片側・単髄節)。

※頸椎症では椎間板ヘルニアよりも、椎間板膨隆・骨棘・靱帯肥厚などが影響して神経障害を引き起こす。

症状の見分け(要点)

中枢性(頸髄症)

  • 筋緊張・深部反射↑、病的反射+、巧緻動作↓(10秒テストでグー/パー合計≦20回なら疑い)、痙性歩行。

末梢性(神経根症)

  • 筋緊張・反射↓、筋萎縮・線維束攣縮あり。

  • 好発:C6(C5/6)、C7(C6/7)、C5(C4/5)。

    • C5:三角筋↓、上腕外側の感覚↓、二頭筋反射(多くはC5/6)

    • C6:上腕二頭筋・手関節背屈↓、母指~示指の感覚↓、腕橈骨筋反射↓

    • C7:上腕三頭筋・手関節掌屈↓、中指周辺の感覚↓、三頭筋反射↓

誘発/軽減動作

  • スパーリング(患側伸展・側屈+軸圧)で根症状↑。

スパークリングテスト

  • 屈曲・健側側屈で軽減しやすい(※一致しない場合は筋膜性疼痛を疑う)。

画像と鑑別

  • MRIで狭窄部位と臨床所見を突き合わせる。

  • 筋膜性疼痛でも上肢のしびれ様症状は起こり得る:姿勢や局所圧痛、誘発動作の非典型性がヒント。

  • OPLL(後縦靱帯骨化)合併に注意:頸椎で多く、他靱帯骨化を伴いやすい。


リハビリの考え方(共通原則)

  1. 二次障害の予防

    • 可動域(痛みのない範囲で頸椎・肩甲帯)維持、拘縮・廃用を防ぐ。

    • 手指の巧緻練習、歩行安全性の確保(必要に応じて補助具)。

  2. 神経筋再教育

    • 肩甲骨セッティング腱板促通三角筋/前腕・手指の分離運動

    • 低負荷・高頻度の等尺→等張。CKCを適宜活用(壁押し・テーブル荷重など)。

  3. 姿勢・環境整備

    • 上位胸椎伸展・頭部前方位の是正、画面高さ/椅子調整、下向き作業は時間管理

    • 物は体幹近位で保持、反復挙上は回避・分散。

  4. 経過モニタリング

    • MMT、反射、感覚、10秒テスト、DASH等を2–4週ごとに。停滞・悪化は治療方針見直し/外科評価

介入例(フェーズ別の目安)

  • 急性〜亜急性:症状増悪肢位回避、アイソメトリック、頸肩の軽いモビライゼーション、巧緻タスク(クリップ、コイン拾い)。

  • 回復期:前鋸筋/下部僧帽筋の強化、腱板等尺→弾性帯、前腕の分離運動、頸部の低負荷持続伸張(痛みなし)。

  • 復帰期:作業特異的練習、荷重・反復の段階的増量、セルフマネジメント(休憩・フォーム)。

外科的治療:重度の頸髄症、進行例、保存で改善乏しい神経根症などは除圧±固定を検討。リハは術前の体力維持術後の段階的再獲得へ移行。


よくある質問(Q&A)

Q1. 首の画像で狭窄があってもしびれが典型的じゃないのは?
A. 筋膜性疼痛など別要因の可能性。画像×症状×誘発/軽減動作の三点一致で判断しましょう。

Q2. リハでまず何から?
A. 症状を悪化させない範囲で肩甲帯の安定化と巧緻動作。頸部は痛みなし・短時間から。

Q3. 10秒テストの解釈は?
A. 両上肢挙上でグー/パーを10秒。合計20回以下なら巧緻障害の目安(単独で断定せず他所見と併せ判断)。

Q4. 予防のコアは?
A. スマホ首対策(画面高・休憩)、上位胸椎伸展の可動性確保、下を向く時は胸椎から屈曲する意識。

Q5. いつ手術を検討?
A. 頸髄症でADL障害が明確神経所見が進行保存で改善停滞。主治医と時間軸の目標を共有。


最終更新:2025-10-05