概要(まず押さえる)
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顎関節症は20〜30代女性にやや多いが、男女ともに起こる。
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典型症状:①開口時痛 ②開口障害 ③関節雑音(クリック/クレピタス)。
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背景要因:頭部前方位(猫背)、歯ぎしり・食いしばり、片側咀嚼、ストレスなど。
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まずは歯科での評価(噛み合わせ・スプリント適応・歯列/関節評価)を前提に、理学療法では姿勢・筋の過緊張へアプローチ。
痛みを起こしやすい代表筋(臨床ポイント付き)
① 咬筋(こうきん)
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もっとも関与が多い閉口筋。耳前〜頬の圧痛、開口時痛、耳鳴り・頭痛の関連も。
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所見:触診でロープ状の硬結/歯ぎしり既往。
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ケア:下顎を軽く閉じ(歯は当てず)唇を閉じる“リラックス位”+温罨法(10–15分)。
② 側頭筋
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側頭部〜上顎の関連痛。片側咀嚼・食いしばりで過緊張。
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ケア:こめかみ部を軽圧で円弧状にほぐしつつ、舌先を上顎前歯の裏側の歯茎付近に置く(舌位改善)→閉口筋の過活動を抑える。
③ 内側翼突筋(ないそくよくとつきん)
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強い閉口筋。開口制限に関与。
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触診・直達操作は口腔内アプローチが必要 → 日本では医師/歯科医師のみ可。
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間接ケア:咬筋・側頭筋の緩解、姿勢是正で負担軽減。
④ 外側翼突筋
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上頭:閉口/下頭:開口に関与。関節円板の挙動にも関係。
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こちらも直接の口腔内操作は歯科領域。理学療法は肩頸部の姿勢・肩甲帯の下制是正で牽引ストレスを減らす。
⑤ 顎二腹筋(がくにふくきん)
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前腹:下顎・口底の関連痛/後腹:側頸部の関連痛。
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主因では稀だが、咬筋・側頭筋で改善乏しい時に再評価。
姿勢と習慣に対するコア介入
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頭部前方位の修正
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胸椎伸展エクサ(椅子にもたれて両手万歳を小さく10回×2)。
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**顎引き(上位頸椎の軽い屈曲)**で頭位リセット。
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安静位の徹底(N-position)
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上下の歯は“離す”/唇は“閉じる”/舌は“上顎に軽く接触”。
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避けること:大口を開けるあくび、ガムや硬い食品の反復、片側噛み、うつ伏せ睡眠、頬杖。
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セルフケア:就寝前の温罨法、日中の“歯を当てない”意識づけ、ストレス時のマウスチェック(上下歯が当たっていたら離す)。
口腔内の直接施術(翼突筋など)は歯科領域。非医療者は実施しません。必要時は歯科へ連携(スプリント・かみ合わせ調整・画像評価)。
よくある質問(Q&A)
Q1. 口が開きにくい日は何をすべき?
A. 温罨法→安静位→小さな開閉運動(痛みゼロ範囲で10回×2)。無理なストレッチは逆効果。
Q2. 関節がカクッと鳴るのは治療すべき?
A. 痛みや機能障害がなければ経過観察可。痛み・可動制限・開口偏位があれば歯科受診を。
Q3. 歯ぎしりが強いと言われた…
A. 就寝中はスプリントの検討を歯科へ。昼間は**TCH(持続的歯接触)**をやめる意識づけが有効。
Q4. どのくらいで良くなる?
A. 生活習慣修正+筋の過緊張是正で数週〜数か月。反復的な食いしばりや強いストレスが残ると長引きます。
Q5. 受診の目安は?
A. 急な開口不能、顔面の腫れ・発熱、外傷後の強痛、神経症状があれば至急受診。慢性でも3〜4週で改善乏しいなら歯科/専門医へ。
まとめ(実践順序)
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歯科評価(スプリント適応・咬合・関節所見)。
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姿勢介入(頭部前方位の是正/胸椎伸展/安静位)。
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表層筋の過緊張を下げる(咬筋・側頭筋の安全なセルフリリース+温罨法)。
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悪習慣の是正(片側咀嚼・硬食品・TCH・睡眠姿勢)。
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改善乏しければ歯科と連携し原因筋・円板・関節の再評価。
最終更新:2025-10-08




