顔面筋(表情筋)の種類と動きについて

顔面筋の種類と起始停止および作用について記載しています。掲載している筋肉については目次をご確認ください。

顔面筋について

顔面筋は顔の皮膚に停止部を持つことから、表情を作る筋肉(表情筋)または皮筋と呼ばれています。

喜怒哀楽を表現するためには、以下の顔面筋を収縮させることで様々な表情を作り出していきます。

①後頭前頭筋の概要

後頭前頭筋(occipitofrontalis)は、前頭筋と後頭筋からなる二腹筋です。中間部(頭頂部)の帽状腱膜を境に分かれます。

額にシワを寄せるように働き、驚きの表情を作ります。側頭頭頂筋を合わせて頭蓋表筋と呼ばれる場合もあります。

後頭前頭筋|前頭筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 ①後頭腹:上項線の外側2/3部、側頭骨の乳様突起
②前頭腹:帽状腱膜
停止 ①後頭腹:帽状腱膜
②前頭腹:眉毛の上の皮膚
動作 前頭部(額)に皺を寄せる
栄養血管 ①後頭腹:後頭動脈
②前頭腹:眼動脈

②皺眉筋(すうびきん)の概要

皺眉筋(corrugator supercilii)は、眉間にシワを作って、いわゆる眉を細める表情を作ります。しゅうびきんと表現する場合もあります。

皺鼻筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 眉間
停止 眉の皮膚
動作 眉間に縦皺を寄せる
栄養血管 眼動脈

③眼輪筋の概要

眼輪筋(orbicularis oculi)は、眼を閉じる筋肉になります。眼瞼部、眼窩部、涙嚢部の三つに分けられます。

1.眼瞼部
眼輪筋眼瞼部
2.眼窩部
眼輪筋眼窩部
3.涙嚢部(るいのう)
眼輪筋涙嚢部
支配神経 顔面神経(VII)
起始 ①眼瞼部:内側眼瞼靭帯
②眼窩部:前頭骨鼻部
③涙嚢部:後涙嚢稜
停止 ①眼瞼部:外側眼瞼靭帯
②眼窩部:眼窩周囲の皮膚と瞼板
③涙嚢部:内眼角
動作 ①眼瞼部・眼窩部:眼瞼を閉じる
②涙嚢部:涙嚢を広げて涙の流入を促進する。

④眉毛下制筋の概要

眉毛下制筋(depressor supercilii)は、名前通りに眉毛を下げる筋肉です。眼輪筋の筋束の一部が眉毛部分に伸びて眉毛下制筋となります。

眉毛下制筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 眼窩の内側縁
停止 皺眉筋の下
動作 眉毛を下げる

⑤鼻根筋の概要

鼻根筋(procerus)は、鼻の部分にシワを作り、いわゆる顔のしかめっ面(嫌悪感の表情)を作ります。

鼻根筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 鼻骨下部
停止 眉間の皮膚
動作 鼻根に横皺を寄せる

⑥鼻筋の概要

鼻筋(nasalis)は、横部と翼部のふたつに分けられます。横部は鼻孔圧迫筋、翼部は鼻孔開大筋とも呼ばれます。

 1.横部(鼻孔圧迫筋)
鼻筋横部
2.翼部(鼻孔開大筋)
鼻筋翼部
支配神経 顔面神経(VII)
起始 鼻の両側(上顎骨)
停止 ①横部:鼻骨
②翼部:鼻翼の外縁と下縁
動作 外鼻孔を狭める

⑦鼻中隔下制筋の概要

鼻中隔下制筋(depressor septi)は、名前の通りに鼻中隔を引き下げる筋肉です。鼻中隔とは、鼻腔の内部を左右に仕切る壁になります。

鼻中隔下制筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 上顎骨の切歯窩
停止 鼻中隔、鼻筋翼部の後部
動作 鼻中隔を引き下げる

⑧上唇鼻翼挙筋の概要

上唇鼻翼挙筋(levator labii superioris alaeque nasi)は、上唇と鼻翼を挙上させる筋肉です。収縮すると鼻孔が開き、鼻唇溝のシワが深まって嫌悪感の表情を作ります。

上唇鼻翼挙筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 上顎骨の前頭突起
停止 上唇と鼻翼の皮膚
動作 上唇と鼻翼を挙上する

⑨上唇挙筋の概要

上唇挙筋(levator labii superioris)は、眼輪の下に位置することから眼輪下筋と呼ばれることもあります。

上唇挙筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 眼窩内側下縁(上顎骨)
停止 上唇の皮膚
動作 上唇を挙上する

⑩小頬骨筋の概要

小頬骨筋(zygomaticus minor)は、上唇を外上方に引き上げます。

小頬骨筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 頬骨
停止 上唇の皮膚
動作 上唇を外上方に引き上げる

⑪大頬骨筋の概要

大頬骨筋(zygomaticus major)は、口角を引き上げることで笑筋とともに笑顔を作るように働きます。

大頬骨筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 頬骨弓
停止 口角
動作 口角を外上方に引き上げる

⑫笑筋の概要

笑筋(risorius)は、名前の通りに笑顔を作る筋肉です。顔に皮下脂肪が多い場合は、笑筋の収縮でえくぼが出来ます。

大頬骨筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 耳下腺上の筋膜
停止 口角の皮膚
動作 口角を後方へ引く(笑う)

⑬頬筋の概要

頬筋(buccinator)は、息を口で吸ったり吹いたりするのを補助する役割があります。また、頬を歯に押し付けることで咀嚼を補助します。

頬筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 上顎骨と下顎骨の歯槽突起
停止 口輪筋の口角部の深層の線維
動作 口角を後方に引く

⑭口角挙筋の概要

口角挙筋(levator anguli oris)は、名前の通りに口角を挙上させる動きを持ちます。犬歯窩に起始を持つことから犬歯筋とも呼ばれます。

口角挙筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 上顎骨犬歯窩(眼窩下孔の直下)
停止 口角の皮膚
動作 口角を挙上する

⑮口輪筋の概要

口輪筋(orbicularis oris)は、口を閉じたり、口を尖らせるように作用します。口角下制筋と共同して怒りの表情を作ります。

口輪筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 上顎骨と下顎骨の正中部
停止 口唇の粘膜
動作 口を閉じる、 口唇を前方へ突き出す

⑯口角下制筋の概要

口角下制筋(depressor anguli oris)は、口角を引き下げて口を「への字」に曲げます。

口角下制筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 下顎骨下縁
停止 口角の皮膚
動作 口角を下げる

⑰オトガイ筋の概要

オトガイ筋(depressor labii inferioris)は、オトガイ筋が強く収縮するとアゴの先に梅干しのようなシワが寄ります。

オトガイ筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 下顎骨の前面
停止 オトガイの皮膚
動作 オトガイの皮膚を引き上げる、下唇を前方へ突き出す

⑱下唇下制筋の概要

下唇下制筋(mentalis)は、名前の通りに下唇を引き下げる作用をします。泣きそうな表情を作り出します。

下唇下制筋
支配神経 顔面神経(VII)
起始 下顎骨の前面(オトガイ孔と下顎骨正中の間)
停止 下唇の皮膚
動作 下唇を引き下げる

他の記事も読んでみる

The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
rehatora.net © 2016 Frontier Theme