椎前筋の種類と起始停止および作用について記載しています。掲載している筋肉については目次をご確認ください。
椎前筋について
頸椎前面に付着している頚長筋、頭長筋、前頭直筋、外側頭直筋を総称して椎前筋(prevertebral muscles)と呼びます。斜角筋を含める場合もあります。
①頚長筋の概要
頚長筋(longus colli)は、頚部前面深層に位置する筋肉で、上斜部、下斜部、垂直部の三つに分けられます。
頚長筋はその特殊性により非常に変異が大きく、そのために細かい機能に関する異論が多い筋肉のひとつです。
頚部屈曲の運動範囲は0-45度になります。女性は男性より頚椎前彎の程度が強い場合が多く、そのため女性のほうが頚部の運動範囲は大きくなります。
1.頚長筋下斜部 | |
2.頚長筋上斜部 | |
3.頚長筋垂直部 | |
支配神経 | 頚神経叢(C2-C6)の直接の枝 |
起始 | ①上斜部:C3-C5椎骨の横突起の前結節 ②下斜部:T1-T3椎骨の椎体の前面 ③垂直部:C5-T3椎骨の椎体の前面 |
停止 | ①上斜部:環椎(C1)の前結節 ②下斜部:C5、C6椎骨の横突起の前結節 ③垂直部:C2-C4椎骨の前面 |
動作 | 片側:同側に頚椎を傾け、回転させる 両側:頚椎の屈曲(前屈) |
栄養血管 | 上行咽頭動脈、椎骨動脈 |
②頭長筋の概要
頭長筋(longus capitis)は、最も深部の頸椎前面に付着する筋肉で、頸椎の安定性に貢献する筋肉です。
頭部屈曲の運動範囲は0-15度であり、頚部との複合屈曲の可動域は0-55度になります。
支配神経 | 頚神経叢の直接の枝(C1-C3) |
起始 | C3-C6椎骨の横突起の前結節 |
停止 | 後頭骨基底部 |
動作 | 片側:頭部を同側に側屈する 両側:頭部を固定する |
③前頭直筋の概要
前頭直筋(rectus capitis anterior)は、環椎と後頭骨をつなげる筋肉です。頚長筋のすぐ後方に位置する短く扁平な形状をしています。
支配神経 | 第1,2頚神経の前枝 |
起始 | 環椎(C1)の外側部 |
停止 | 後頭骨基底部 |
動作 | 片側:環椎後頭関節の側屈 両側:環椎後頭関節の屈曲 |
④外側頭直筋の概要
外側頭直筋(rectus capitis lateralis)は、環椎と後頭骨をつなげる筋肉です。前頭直筋と同じく短く扁平な形状をしています。
支配神経 | 第1,2頚神経の前枝 |
起始 | 環椎(C1)の横突起 |
停止 | 後頭骨基底部 |
動作 | 片側:環椎後頭関節の側屈 両側:環椎後頭関節の屈曲 |
頚部深層屈筋の不良姿勢
現代人に多くみられる頭部前方位姿勢は、上位頸椎伸展と下位頸椎屈曲が強くなった状態です。
この状態が持続されると、頚長筋や頭長筋といった頚部前面に付着する深層屈筋が弱化することになります。
そのため、頭部前方位姿勢に対しては頸部深層屈筋の促通を行うことで、姿勢矯正を実施する場合は臨床でも多々あります。
方法として、患者に背臥位をとってもらい、術者は頭部を両手で把持します。この際に、下部頸椎は伸展位に保持し、上位頸椎の動きが出しやすい位置にします。
患者に顎を引いて頭部を少し挙上するように指示し、頭長筋や頚長筋といった頸部深層屈筋群の収縮を促していきます。