短腓骨筋(peroneus brevis)

短腓骨筋の概要

短腓骨筋の起始停止

短腓骨筋は前外側区画の外側群に属する外反+底屈筋。長腓骨筋の深層を下走し、外果(腓骨遠位)後方の腓骨筋溝を経て第5中足骨粗面(基部結節)に停止します。
長腓骨筋が足底を回り第1中足骨・内側楔状骨
へ至るのに対し、短腓骨筋は足外側のてことして働き、内反捻挫の制動外側縦アーチの支持に寄与します。

基本データ

項目 内容
支配神経 浅腓骨神経
髄節 L4–S1(臨床的にはL5優位のことが多い)
起始 腓骨外側面遠位1/2(前・後隔壁近傍)
停止 第5中足骨粗面(基部結節)
栄養血管 腓骨動脈(±後脛骨動脈枝)
動作 足関節外反底屈(補助)
筋体積 70
筋線維長 3.6
速筋:遅筋(%) 37.562.5

運動貢献度(目安)

  • 外反:①長腓骨筋 > ②短腓骨筋 > ③第三腓骨筋

  • 底屈:①ヒラメ筋 > ②腓腹筋 > ③長腓骨筋(短腓骨筋は補助)


機能と臨床ポイント

  • 外果後方を通る“外反筋”:第三腓骨筋(外果前方)と走行で鑑別。

  • 内反捻挫の遠心制動に重要。腱炎/腱鞘炎/分裂腱(split tear)腱脱臼の評価対象。

  • 外側縦アーチ支持:停止が第5基部のため、前足部外側の安定に直結。


触診のコツ

  • 体位:背臥位/長座位。

  • 誘導底屈+外反を軽く指示。

  • 触診ポイント:腓骨外側遠位1/2の長腓骨筋の深層で、下方へ行くほど短腓骨筋の筋腹が優位。外果後方で2条の腱(長・短)を触り分け、より前内側=短腓骨筋腱を追う。


ストレッチ

  • 方向内反+背屈(過度は禁忌)。

  • 方法(例):座位で足背を包み、足底を内側へ向けながらゆっくり背屈。痛みのない範囲で静的保持。

  • 注意:捻挫急性期や腱障害では強い内反端屈は避ける


筋力トレーニング

  • チューブ外反(DF/EV):足背にバンドを掛け、背屈しながら外反へ引く(第三腓骨筋との協調も得やすい)。

  • アイソメ外反:壁や手に足外縁を押し付け、5–8秒保持×反復。

  • カーフレイズ(外反バイアス):立位で爪先立ち。前足部外側へ軽く荷重して上がり下がり(親指だけに乗りすぎると長腓骨筋・後脛骨筋側へ逃げやすいので外縁を意識)。


トリガーポイント(TP)

  • 主訴:外果のやや後方〜外側足部に広がる鈍い痛み・張り感、時に外くるぶし周囲の不安定感。

  • 誘因:内反ぎみの立位・歩行や内反捻挫後の代償、長時間の片脚荷重・つま先立ちでの外側コンパートメントの反復過負荷。


歩行での筋活動(概略)

  • **立脚中期(MSt)〜立脚終期(TSt)**にかけて活動し、外反モーメントで内反を制動、前足部移行を安定化。



よくある誤解と鑑別:第5中足骨基部骨折

  • 下駄履き骨折(=第5中足骨粗面裂離骨折):短腓骨筋腱牽引で**粗面(基部結節)**が剥離。内反捻挫直後に多い。

  • Jones骨折基部から1.5–3cm遠位骨幹端部横骨折血行乏しく難治性
    同義ではない部位で判別し、固定・荷重制限方針が変わる。


関連疾患

腓骨筋腱損傷/腱鞘炎/腱脱臼, 第5中足骨粗面裂離骨折(pseudo-Jones), Jones骨折, 足関節内反捻挫 ほか


Q&A

Q1:短腓骨筋と長腓骨筋、鍛え分けは可能?
A:DF+外反は短腓骨筋に、PF+外反&第1列荷重は長腓骨筋に入りやすい。チューブ角度で背屈成分を増やすと短腓骨筋の比重↑。

Q2:トレ中に外側が張って痛い
A:腱鞘の滑走不全負荷漸増ミスの可能性。アイソメ→低振幅等張→フルROMの順で段階づけ、内反端屈は避ける

Q3:捻挫後の不安定感が抜けない
A:前距腓・踵腓靭帯の機械的不安定に加え、腓骨筋群の反応遅延が残存しがち。**DF/EVアイソメ→反応速度ドリル(短接地ジャンプなど)**を段階的に。

Q4:触診で長・短の腱が混同する
A:外果直後前内側=短腓骨筋腱/後外側=長腓骨筋腱を確認し、遠位へ追えば短は第5基部で止まる点で判別。

Q5:外反ストレッチはいつから?
A:急性期(腫脹・圧痛強い時期)は回避。疼痛が落ち着き次第、軽い内反+背屈から静的に。


最終更新:2025-10-07