要旨
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大殿筋は腰痛に頻繁に関与。特に筋膜ラインの一つBFL(広背筋→胸腰筋膜→反対側大殿筋)に機能不全があると、力の伝達不良と過負荷が起きやすい。
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痛みは日替わり・部位が移るなど“筋膜障害らしさ”を示しやすく、殿部・腰仙移行部・背部・大腿外側に波及することが多い。
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介入は ①疼痛の再現とライン評価 → ②胸腰・仙腸部のモビリティ回復 → ③BFLの協調収縮再学習 の順で。
BFL障害を知る
BFL(Back Functional Line)
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走行:片側の広背筋 → 胸腰筋膜 → 反対側の大殿筋(=“後方の斜めスリング”)。
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役割:投球・ダッシュ・リフトなどで、上肢の力を体幹を介して対側下肢へ効率よく伝える。
典型症状
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仰臥位で下肢内転・内旋+体幹のねじりで疼痛再現(ライン伸張で誘発)。
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押すと反対側に響く(腰→反対殿、殿→反対背部など)。
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殿上部線・腰仙部・広背筋起始・外側広筋に圧痛点。
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片脚立位の保持が不安定、大殿筋の張り低下(萎縮)。
“筋膜障害らしさ”の見分け方
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痛みの波が大きい/日によって変わる。
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痛みが同一ライン上を移動(腰→殿→背部…)。
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椎間関節障害や椎間板性疼痛は、一般に部位が固定・波が小さいことが多い。
※レッドフラッグ(安静時激痛、発熱、進行性神経症状、外傷直後の激痛等)があれば医療受診を優先。
評価の手順(実地向け)
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疼痛再現テスト:仰臥位で患側下肢を内転・内旋しながら体幹を逆方向へ回旋。
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触診:仙腸関節周囲・胸腰筋膜移行・広背筋起始・大腿外側のライン上トリガー。
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機能テスト:
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片脚立位保持(骨盤ドロップ・体幹回旋の有無)。
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腹臥位股関節伸展で殿筋遅発/脊柱起立筋優位をチェック。
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介入(クリニック/自宅)
1)モビリティ回復
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仙腸関節・腰仙部の軽いモビライゼーション。
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側臥位:上側大殿筋を伸張するイメージで、腸骨稜を前上方/仙骨を安定させながら骨盤の微小回旋。
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胸腰筋膜のソフトティッシュリリース(過刺激は避ける)。
2)ラインの協調収縮ドリル
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プリンシプル:**殿筋(伸展)×反対側広背筋(下制・内転)**の同時化。
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例)
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腹臥位対角リフト:患側股関節伸展+反対側肩の軽い伸展・内転。3秒保持×8–10回。
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ブリッジ+バンドで肩下制(胸郭前突は避ける)。
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バードドッグ(対角):骨盤の水平維持を最優先。
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仕上げに片脚立位保持(骨盤水平、胸郭過伸展なし)20–30秒×3。
3)セルフケア
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フォームローラー:殿上部線・広背筋外側縁を軽圧で1か所30–60秒。
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呼吸セット:口すぼめ呼気6–8秒×6で肋骨前突を抑え、胸腰筋膜の張り過多をリセット。
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負荷管理:片側バッグ・反り立ち・長時間座位の偏ったパターンを減らす。
よくある質問(Q&A)
Q1. どのくらいで改善する?
軽症なら1–3週で日常の張りが軽減。慢性化・萎縮が強い例は4–8週の継続練習が必要。
Q2. どこを“鍛えれば”良い?
大殿筋単独ではなく、大殿筋×反対側広背筋の“対角スリング”が鍵。ブリッジやバードドッグなど協調を重視。
Q3. もみほぐしだけで治る?
リリースは痛み軽減に有効だが、モビリティ→協調収縮→姿勢習慣の修正までセットで実施すると再発を抑えられる。
Q4. 椎間板や関節が原因かの見分けは?
夜間増悪の強い痛み、坐骨神経症状の進行、咳くしゃみで増悪などが目立つ場合は画像・専門評価を推奨。
最終更新:2025-10-07
