多裂筋を鍛えるために知っておきたいこと

要点

  • 多裂筋はインナーマッスル(深層筋)。主役は「関節の安定化」で、動かすよりブレを止める役割。

  • 下位腰椎では多裂筋の比重が大きく、“動きより安定”が最優先。過剰な可動性はむしろリスク。

  • 多裂筋が機能不全だと、表層の脊柱起立筋が代償→硬さ・痛み・疲労感が蓄積。

  • 鍛える前に表層筋を緩める低負荷・高頻度で多裂筋へスイッチ、が基本戦略。


多裂筋はなぜ重要か

  • 関節安定の“腱板”役:肩でいう棘上筋のように、脊椎の中心で微小な制御を担う。

  • 下位腰椎での役割が大:L4–S1周辺は荷重・力学ストレスが集中。ここは可動を増やすより安定を上げる方が椎間板・椎間関節保護に有利。

  • 表層優位の弊害:多裂筋低下→脊柱起立筋が頑張り過ぎ→持続収縮で硬化→「腰が常に張る」「反ると楽・曲げると重い」などの訴えに繋がる。


よくある誤解と注意

  • “硬い=もっと伸ばす”は危険:下位腰椎は安定優先。無理なモビライゼーションは疼痛源の転移を招きやすい。

  • 高負荷背筋トレで悪化:多裂筋狙いのつもりが、脊柱起立筋ばかりが働くと痛みが増えることも。

  • 深層は“低負荷×高頻度”:表層の動員が増える強度は深層学習の妨げ


介入の手順(臨床&セルフ)

1) 前処置:表層筋リリース

  • 触れて圧痛・滑走低下が強い部位(脊柱起立筋外縁、胸腰筋膜)に軽圧+伸張を持続

  • 組織間リリースで筋膜の滑りを先に回復→深層の入りやすさが段違いに。

2) 多裂筋アクティベーション(痛み0–3/10内)

  • 骨盤ニュートラル練習(座位):軽く骨盤前傾→中間位保持5–10秒×10回。

  • 四つ這いバードドッグ(小可動):骨盤・腰椎を動かさず、指先とつま先を数cmだけ離す→10秒保持×5–8回/側。

  • プリゾン・プレス(タオルで軽抵抗):胸郭を固定し腹圧を保ったまま、ごく小さな伸展抵抗に対抗。表層に力が入るなら強度を下げる。

3) 協調の再学習

  • 呼吸×コア:自然呼吸で軽いドローイン(腹横筋)+肋骨の前下制。深層群の同時活動を学習。

  • 日常動作への転用:立ち上がり・前屈取り物・荷物リフトは股関節ヒンジ腰椎中間位を徹底。

4) 進行指標

  • 触診で脊柱起立筋の膨隆・圧痛↓

  • 前屈での局所的屈曲感の減少、立位保持の疲れにくさ向上

  • 痛みの増悪なく週3–5回継続できる


こんなサインは多裂筋低下のヒント

  • 朝より午後にかけて重だるい/椅子からの立ち上がり始動が重い

  • 軽作業でも張るのに、じっとしていると楽

  • 触ると表層(起立筋)ばかり硬い側臥位で股関節深屈曲時に腰がつらい


よくある質問(Q&A)

Q1:プランクは有効?
A:条件付きで有効。腰椎中間位を保持し、腹圧と呼吸が崩れない強度で。崩れるなら四つ這い課題に戻す。

Q2:どのくらいで変化する?
A:2–4週で「張りにくさ/姿勢の保ちやすさ」に自覚的変化が出る例が多い。継続で再発率が下がる。

Q3:痛みが強い日は?
A:リリース+呼吸+骨盤中間位保持ごく低負荷に切り替え。痛みが引くまでは背筋系の高負荷は回避

Q4:画像で異常が無いのに痛い…
A:機能(安定化)不全は画像に出にくい。深層の再教育で改善するタイプが多いです。


セッション設計(例:15分/日)

  1. 表層リリース 3分

  2. 呼吸+ドローイン 2分

  3. 骨盤中間位保持(座位) 3分

  4. 小さなバードドッグ 4分

  5. 生活動作の1ポイント練習 3分


最終更新:2025-10-08