要点
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多裂筋はインナーマッスル(深層筋)。主役は「関節の安定化」で、動かすよりブレを止める役割。
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下位腰椎では多裂筋の比重が大きく、“動きより安定”が最優先。過剰な可動性はむしろリスク。
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多裂筋が機能不全だと、表層の脊柱起立筋が代償→硬さ・痛み・疲労感が蓄積。
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鍛える前に表層筋を緩める→低負荷・高頻度で多裂筋へスイッチ、が基本戦略。
多裂筋はなぜ重要か
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関節安定の“腱板”役:肩でいう棘上筋のように、脊椎の中心で微小な制御を担う。
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下位腰椎での役割が大:L4–S1周辺は荷重・力学ストレスが集中。ここは可動を増やすより安定を上げる方が椎間板・椎間関節保護に有利。
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表層優位の弊害:多裂筋低下→脊柱起立筋が頑張り過ぎ→持続収縮で硬化→「腰が常に張る」「反ると楽・曲げると重い」などの訴えに繋がる。
よくある誤解と注意
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“硬い=もっと伸ばす”は危険:下位腰椎は安定優先。無理なモビライゼーションは疼痛源の転移を招きやすい。
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高負荷背筋トレで悪化:多裂筋狙いのつもりが、脊柱起立筋ばかりが働くと痛みが増えることも。
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深層は“低負荷×高頻度”:表層の動員が増える強度は深層学習の妨げ。
介入の手順(臨床&セルフ)
1) 前処置:表層筋リリース
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触れて圧痛・滑走低下が強い部位(脊柱起立筋外縁、胸腰筋膜)に軽圧+伸張を持続。
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組織間リリースで筋膜の滑りを先に回復→深層の入りやすさが段違いに。
2) 多裂筋アクティベーション(痛み0–3/10内)
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骨盤ニュートラル練習(座位):軽く骨盤前傾→中間位保持5–10秒×10回。
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四つ這いバードドッグ(小可動):骨盤・腰椎を動かさず、指先とつま先を数cmだけ離す→10秒保持×5–8回/側。
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プリゾン・プレス(タオルで軽抵抗):胸郭を固定し腹圧を保ったまま、ごく小さな伸展抵抗に対抗。表層に力が入るなら強度を下げる。
3) 協調の再学習
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呼吸×コア:自然呼吸で軽いドローイン(腹横筋)+肋骨の前下制。深層群の同時活動を学習。
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日常動作への転用:立ち上がり・前屈取り物・荷物リフトは股関節ヒンジ&腰椎中間位を徹底。
4) 進行指標
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触診で脊柱起立筋の膨隆・圧痛↓
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前屈での局所的屈曲感の減少、立位保持の疲れにくさ向上
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痛みの増悪なく週3–5回継続できる
こんなサインは多裂筋低下のヒント
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朝より午後にかけて重だるい/椅子からの立ち上がり始動が重い
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軽作業でも張るのに、じっとしていると楽
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触ると表層(起立筋)ばかり硬い/側臥位で股関節深屈曲時に腰がつらい
よくある質問(Q&A)
Q1:プランクは有効?
A:条件付きで有効。腰椎中間位を保持し、腹圧と呼吸が崩れない強度で。崩れるなら四つ這い課題に戻す。
Q2:どのくらいで変化する?
A:2–4週で「張りにくさ/姿勢の保ちやすさ」に自覚的変化が出る例が多い。継続で再発率が下がる。
Q3:痛みが強い日は?
A:リリース+呼吸+骨盤中間位保持のごく低負荷に切り替え。痛みが引くまでは背筋系の高負荷は回避。
Q4:画像で異常が無いのに痛い…
A:機能(安定化)不全は画像に出にくい。深層の再教育で改善するタイプが多いです。
セッション設計(例:15分/日)
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表層リリース 3分
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呼吸+ドローイン 2分
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骨盤中間位保持(座位) 3分
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小さなバードドッグ 4分
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生活動作の1ポイント練習 3分
最終更新:2025-10-08
