スウェイバック姿勢と仙腸関節障害の関係性

症状整理と仮説

  • 主訴:左PSIS(上後腸骨棘)周囲の痛み、左下肢全体のしびれ

  • 体型/姿勢の傾向:中年男性に多いスウェイバック(体幹後方シフト+胸椎屈曲)を背景に、TFL(大腿筋膜張筋)・大腿直筋の短縮ハムストリングスの過緊張を確認。

  • 解剖運動学の要点

    • 仙腸関節はニューテーション(仙骨前傾+寛骨後傾=締まり)とカウンターニューテーション(仙骨後傾+寛骨前傾=緩み)。

    • スウェイバック基調でも、局所的にTFL・大腿直筋が硬い側の寛骨は相対的に前傾しやすく、仙腸関節はカウンターニューテーション側(緩み)に偏位→左PSIS痛の説明と整合。

ポイント:緩み側にロックした仙腸関節(カウンターニューテーション優位)は、**反復の“ギックリ腰”**やPSIS圧痛を招きやすい。

「左下肢全体のしびれ」をどう説明する?

  • 神経根症状/脊柱管狭窄を示す分節性両側性の所見に乏しい。

  • 筋膜性しびれの可能性が高い所見:左脊柱起立筋—外側ハム—腓腹筋(SBLライン)への圧でしびれが再現。

  • 推論:後仙腸靱帯ストレス→付着の多裂筋スパズム→表層の脊柱起立筋まで緊張連鎖→SBL筋膜の滑走不全がしびれ感を増幅。

つまり、一次問題(仙腸関節の不安定)→二次的な筋膜障害という流れ。筋膜リリースだけでは再発しやすく、SIJの安定化が先


評価(最低限のチェック)

  1. SIJプロボケーション・テスト(5つのうち3つ以上)

    • Compression / Distraction / Thigh thrust / Sacral thrust / Gaenslen

  2. 骨盤アライメント:ASIS/PSIS高位差、見かけの脚長差(前傾側が長く見える)。

  3. 筋膜/筋:TFL・大腿直筋・ハムの短縮、PSIS周囲の圧痛。

  4. 神経学的スクリーニング:SLR/Slump、筋力・感覚・反射。分節性なら脊椎精査を併用。


介入の順序(“緩みを止め、締まりを作る”)

フェーズ1:痛みの減弱と“緩み方向”のブレーキ

  • TFL・大腿直筋・腸腰筋のリリース/ストレッチ

    • サイドライイングTFLストレッチ(骨盤軽度後傾を維持)

    • 伏臥位で股関節だけ伸展(腰は反らさない)→大腿直筋

    • ランジで腸腰筋(肋骨を下げ、腹圧を保つ)

  • 骨盤ベルト(短期):立位・歩行時に力閉鎖を外部補助して痛み閾値を下げる。

  • SBLの軽リリース:脊柱起立筋外縁・外側ハム—腓腹筋ラインに痛み0–3/10の範囲で。

フェーズ2:ニューテーション位(締まり)を作る“力閉鎖”

  • 呼気主導の腹圧再学習

    • 鼻3秒吸う→口すぼめ6–8秒吐く→吐き切りで下腹を薄く骨盤底“軽く持ち上げ”

  • 多裂筋の局所活性

    • 四つ這いで骨盤の微小前後傾(背中の盛り上がりNG)、バードドッグ(3–5秒止め×数回)。

  • 後斜スリング(大殿筋×広背筋)

    • ブリッジ(肋骨前突させず、殿筋主導・ハム過活動抑制)

    • スプリットスタンス・ヒンジで股伸展を殿筋主導に再学習

フェーズ3:動作への統合(再発予防)

  • 片脚荷重(骨盤ニュートラル):10–20秒×数回/日。

  • 歩行のキュー:「吐きながら接地」「踵接地で下腹を先に整える」。

  • 姿勢リセット:長時間立位で骨盤前突を作らない、座位は骨盤やや立て1h毎に立って胸椎伸展。


ホームプログラム(目安:毎日5–10分)

  1. TFL・大腿直筋ストレッチ各30–45秒×2

  2. 口すぼめ呼気×6呼吸→ドローイン10秒×5

  3. 殿筋主導のブリッジ 8–12回×2

  4. 片脚荷重 10–15秒×3(痛み0–3/10内)


典型的なNG

  • “反る=締まる”の誤解:肋骨前突で腹圧が抜けると不安定が助長

  • TFLを伸ばさず殿筋トレTFL代償で股前面の張り悪化。

  • ブリッジがハム主導:坐骨前引き→寛骨前傾が強まり逆効果。


よくある質問(Q&A)

Q1:しびれが脚全体にあります。神経の病気では?
A:分節性の神経学的脱落が乏しく、筋膜由来が疑われます。ただし進行性筋力低下・膀胱直腸障害などがあれば直ちに医療機関へ。

Q2:骨盤ベルトはどれくらい使う?
A:痛みが強い時期の補助として。腹圧・多裂・殿筋の協調が戻るほど段階的に卒業します。

Q3:どれくらいで変わる?
A:個人差はありますが、1–2週間の継続で“不安定感の軽減・動作時痛の低下”を感じる例が多いです。

Q4:マッサージだけで良くなりますか?
A:**一次原因(SIJ不安定)**が残ると再発します。緩める→締める→動作再学習の順が大切です。


最終更新:2025-10-08