この記事では、多裂筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
多裂筋の概要
多裂筋は脊椎全体にわたって長く付着しているようにみえますが、実際は細かい筋肉がいくつも連なって構成されています。
脊椎の横突起(腰椎は乳頭突起)または骨盤から起始しており、各起始部から2〜4つ上に位置する椎骨の棘突起に停止します。
脊椎の伸展を主とした関節運動にも作用しますが、その走行や位置からも表層の脊柱起立筋とは異なる動きとなります。
多裂筋は脊椎の分節的伸展運動に作用するのに対して、脊柱起立筋は脊椎をひとつのユニットとして伸展させます。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 脊髄神経の後枝 |
髄節 | ‐ |
起始 | 第4頸椎から第5腰椎までの横突起(乳頭突起)、椎間関節包
仙骨の背面、上後腸骨棘、後仙腸靱帯 |
停止 | 各起始部から2-4椎骨分上位の椎骨の棘突起 |
動作 | 脊柱の伸展・回旋(反対側)・側屈(同側)
椎間関節の安定 |
筋体積 | 71㎤ |
筋線維長 | 6.7㎝ |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
体幹伸展 |
1位 | 脊柱起立筋 |
2位 | 腰方形筋 |
3位 | 半棘筋 |
4位 | 多裂筋 |
表層部と深層部での作用の違い
仙骨や腸骨から起始している多裂筋を表層線維と呼んでおり、椎骨から起始する深層線維と分けて考える必要があります。
表層線維は長い線維で構成されており、仙骨背面や後仙腸靱帯に付着することから、腰仙関節や仙腸関節の安定性に寄与しています。
深層線維は短い線維で構成されており、椎骨同士を連結することから、椎間関節の安定性に寄与しています。
臨床的に多裂筋は非常に重要な筋肉であり、椎間関節障害では深層線維が、仙腸関節障害や筋・筋膜性腰痛では表層線維が関与します。
多裂筋の触診方法
多裂筋の表層は脊柱起立筋などに覆われているため、どのレベルにおいても直接触診することはできません。
ただし、下位腰椎では脊柱起立筋よりも多裂筋(表層線維)のほうが分厚くなっているため、押圧することで間接的に確認することが可能です。
腰部の多裂筋と脊柱起立筋の間は硬くなりやすく、筋・筋膜性腰痛の原因となるので重要なリリースポイントになります。
中位腰椎の多裂筋と脊柱起立筋との割合は1:1であるのに対し、下位腰椎では多裂筋が80%を占めています。
ストレッチ方法
上の図は、腰多裂筋のストレッチ方法になります。
仰向けから両膝を抱えるようにして、腰椎伸展の動きが制限されているレベルの屈曲が出るように意識しながら実施していきます。
腰椎前弯が増強したカイホロードシスのような不良姿勢では、拘縮が存在している可能性が高いので確認してください。
筋力トレーニング
四つ這いとなって対角線上の片手片脚(片脚だけでも可)を挙上し、地面と水平になるように意識しながら姿勢を保ちます。
その際に、アウターマッスルの脊柱起立筋群が強く働きすぎないようにすることが大切なので、腰椎伸展や手足を挙げる高さを調整してポジショニングしていきます。
似た方法に肘とつま先で支える「elbow-toe」などがありますが、そちらは多裂筋よりもアウターマッスルが働くのでお勧めできません。
腰椎前弯が乏しいフラットバックのような不良姿勢では、腰多裂筋の収縮不全が存在している可能性が高いです。
関連する疾患
疾患に関する治療の詳細はリンク先に掲載していますので、さらに知識を深めるためにチェックしてみてください。