膝関節の構造や関節可動域について解説していきます。
この記事の目次はコチラ
膝関節の概要
膝関節は、①脛骨大腿関節(脛骨と大腿骨)と②膝蓋大腿関節(膝蓋骨と大腿骨)の二つの関節を合わせた複関節になります。
場合によっては、③上脛腓関節(脛骨と腓骨)まで含めることもあります。狭義においては、脛骨大腿関節のことを意味します。
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脛骨大腿関節について
狭義の膝関節であり、膝関節の可動域などをみる際は、この関節の動きを計測していることになります。1軸性関節であり、膝の屈曲伸展に作用します。
関節面は大腿骨下端と脛骨上端の内・外側顆同士が接触しているのみであり、安定性に欠けた構造となっています。
そのため、周囲には前・後十字靭帯や内・外側側副、斜膝窩靱帯、腸脛靭帯といった多くの靱帯によって補強されています。
もしもこれらの靱帯が断裂してしまうと、脛骨大腿関節は容易に動揺をきたし、脱臼してしまう危険性が高くなります。
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膝蓋大腿関節について
大腿骨の膝蓋面と膝蓋骨後面によって構成される関節です。膝蓋の裏面は6㎜もある分厚い軟骨が存在し、大腿骨上を滑らかに移動しています。
膝蓋骨の役割は、①大腿四頭筋が擦り減るのを防ぐ、②少しの収縮で膝関節伸展の大きな力を引き出す、③膝関節の保護作用の三つです。
脛骨大腿関節の伸展運動に伴い、膝蓋骨は大腿骨面を上方へ移動します。屈曲運動では、膝蓋骨は大腿骨顆間窩に挟まって固定されます。
完全伸展位では大腿四頭筋が弛緩することで膝蓋骨が浮き上がり、他動的に容易に動かすことができるようになります。
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上脛腓関節について
脛骨上端(外側顆)と腓骨上端(腓骨頭)で構成される平面関節で、関節面は小さく、可動域もほとんどない関節です。
脛骨と腓骨は下腿骨間膜や前腓骨頭靱帯、前脛腓靱帯で結びついており、下腿部を安定させています。
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膝関節の関節可動域と測定方法
前述したように、膝関節の関節可動域は脛骨大腿関節の動きになります。基本姿勢は、仰臥位で股関節は屈曲位にて実施します。
股関節伸展位で計測すると2関節筋の大腿直筋が緊張が入るため、屈曲位と比較して可動域が小さくなるので注意が必要です。
運動方向 | 参考角度 | 基本軸 | 移動軸 | 参考図 |
屈曲 | 130 | 大腿骨 | 腓骨 | ![]() |
伸展 | 0 |
膝関節の動きに作用する筋肉(貢献度順)
方向 | 筋肉 |
屈曲 | 半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、腓腹筋、薄筋、縫工筋、膝窩筋 |
伸展 | 中間広筋、外側広筋、内側広筋、大腿直筋 |
膝関節屈曲の動きについて
膝関節の1軸性で屈曲伸展といった単純な動きをしますが、実は関節包内ではとても複雑な動きをしていることがわかっています。
膝関節は転がりと滑りの運動をしますが、屈曲初期は転がりが主で、屈曲角度が増すと徐々に滑りが増加していきます。
屈曲90度以上ではほとんどが滑り動作によるもので、ただの並進運動ではなく、回旋しながらの滑り動作となっています。
そのため、歩行時などで膝関節にかかる荷重部位は常に変化します。
下図は、膝関節を屈曲角度と接触面の位置および範囲で現したものです。伸展位では前方に、屈曲位では後方に圧がかかっています。
外側面よりも内側面のほうが接触部分が前後に大きく移動しています。これは、内側半月板の動きが乏しいことに起因しています。
移動距離が増えると関節軟骨への負荷が大きくなり、軟骨が摩耗して炎症を起こしやすくなります。それが正座は膝に良くないといわれる所以です。
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膝関節周囲の靱帯
膝関節は骨性支持に乏しいため、周囲にある多くの靱帯や筋肉で安定性を高めており、関節内は半月板にて適合性を高めています。
そのため、スポーツなどで膝関節に急激な負担が加わると、半月板や前十字靭帯といった周囲組織を痛めやすい状態にあります。
1.膝関節の靱帯(前面) |
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2.膝関節の靱帯(後面) |
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3.膝関節の靱帯(内側面) |
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4.膝関節の靱帯(外側面) |
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5.膝関節の靱帯(深部前面) |
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6.膝関節の靱帯(深部後面) |
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靱帯 | 機能 |
膝蓋靭帯 | 大腿四頭筋の腱 |
腸脛靭帯 | 膝関節の安定 |
内側縦膝蓋支帯 | 関節包の補強,膝蓋骨の安定 |
内側横膝蓋支帯 | 関節包の補強,膝蓋骨の安定 |
膝内側側副靭帯 | 膝関節の外側への安定 |
外側縦膝蓋支帯 | 関節包の補強,膝蓋骨の安定 |
外側横膝蓋支帯 | 関節包の補強,膝蓋骨の安定 |
膝外側側副靭帯 | 膝関節の外側への安定 |
斜膝窩靱帯 | 膝関節の安定 |
弓状膝窩靱帯 | 膝関節の安定 |
前腓骨頭靱帯 | 上脛腓関節の安定 |
後腓骨頭靱帯 | 上脛腓関節の安定 |
前十字靭帯 | 膝関節の前方への可動性を制限 |
後十字靭帯 | 膝関節の後方への可動性を制限 |
膝横靱帯 | 膝伸展時に半月板の前方移動を防止 |
後半月大腿靱帯 | 外側半月板の安定 |
※弓状膝窩靱帯は欠損している場合もある
Screw Home Movement
膝関節を伸展させるとき、最終域(15度前後)において、大腿骨外顆が脛骨外顆の関節面上を前方に滑り、さらに大腿骨は約7度の内旋が生じます。
この動きをネジを回転させてはめ込むのと似ていることから、スクリューホームムーブメント(SHM)と呼ばれています。
この作用により、膝関節は完全伸展位で最も安定した位置になるため、これをロッキングメカニズムともいいます。
SHMは筋肉の収縮による動きだけでなく、周囲の靭帯が動きを誘導するように作用することから実現できています。
そのため、前十字靭帯が損傷している症例においては、最終伸展域で脛骨の外旋運動が生じず、膝関節の脱臼感や恐怖感を訴えます。
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膝関節周囲の組織について
1.膝関節軟骨
骨の関節面を覆っている軟骨であり、関節の滑りをよくする役割を担っています。
神経や血管は存在せず、関節液から栄養を補給しています。そのため、一度損傷してしまうと再生されることはありません。
関節軟骨の摩擦係数は0.02から0.005であり、アイススケートの摩擦係数が0.05ほどなので、関節は軟骨があることでほとんど摩擦が生じない構造となっています。
膝関節の軟骨は2-4㎜と分厚く、関節内には半月板という軟骨がもうひとつあり、負担を減らして長持ちするように二重の緩和構造をとっています。
2.膝蓋骨
大きさは成人で約12㎠で、上部には大腿四頭筋、下部には膝蓋腱が付着します。人体で最大の種子骨になります。
膝蓋骨後面は大腿骨と接して膝蓋大腿関節を構成しており、約6㎜の分厚い関節軟骨が付着しています。
膝蓋骨には、①大腿四頭筋の摩耗防止、②膝関節の伸展力を増幅、③膝関節の保護といった役割があります。
3.半月板
膝関節には内側と外側にふたつの半月板(軟骨の板)が存在しており、膝関節軟骨と合わせて二重の緩和効果を発揮します。
半月板には、①荷重の緩衝機能、②荷重の均等化、③関節の安定化といった役割が存在しています。
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4.膝蓋上包
膝蓋上包の役割は、大腿四頭筋と大腿骨の摩耗を防止し、スムーズな膝関節の動きを実現するために機能しています。
膝蓋上包に癒着や線維化が生じた場合、上下への移動が乏しくなり、挟み込まれてしまって膝関節の動きを制限してしまうことになります。
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5.関節液
関節液の役割は、①関節の滑りをよくする潤滑油としての作用、②関節軟骨に栄養を送る作用のふたつがあります。
よく関節に水が溜まるといいますが、それは滑膜が炎症を起こして、過剰に関節液が生産されていることが原因です。
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