PNFの概要
PNF（Proprioceptive Neuromuscular Facilitation）は、日本語では固有受容性神経筋促通法と呼ばれ、1946年に米国のH. Kabatらによって創始されたリハビリテーション手技です。
目的は、固有受容器を効果的に刺激することで神経筋の反応を促通し、運動機能を高めることにあります。
PNFは、適切な負荷量とさまざまな筋収縮様態を組み合わせて運動を行う点に特徴があります。
PNFの治療原理
PNFは、筋力トレーニングにおける三つの原理（特異性・過負荷・可逆性）を根拠としており、とくに特異性の原理と過負荷の原理が中心となります。
① 特異性の原理
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目的に合った負荷を選ばなければ効果が得られない
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例：マラソンは持久力、短距離走は筋出力が向上する
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→ 目的動作に合わせて負荷の強度と量を調整する
② 過負荷の原理
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筋を疲労させる強い負荷（過負荷）でなければ筋力は向上しない
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→ PNFでは徒手的に最大負荷をかけることで筋活動を促通
| 条件 | 持久力 | スピード | 筋出力 |
|---|---|---|---|
| 強度（％） | 25–40 | 50–80 | 80–100 |
| 反復回数 | 40回以上 | 約10回 | 1–6回 |
| セット数 | 5 | 4 | 3 |
筋収縮様態とPNF
PNFでは、実際の生活動作に即したさまざまな筋収縮様態を用いることが重要です。求心性収縮ばかりを繰り返しても機能は十分に回復しません。
| 種類 | 特徴 | 生活場面例 |
|---|---|---|
| 求心性収縮 | 筋長が短縮しながら収縮 | ダンベルを持ち肘を曲げる |
| 遠心性収縮 | 筋長が延長しながら収縮 | ダンベルを持ち肘を伸ばす |
| 等尺性収縮 | 筋長が変化せずに収縮 | 肘を静止保持する |
| 等張性収縮 | 筋張力が一定で収縮（生活では起きにくい） | — |
| 等速性収縮 | 速度が一定で収縮（生活では起きにくい） | — |
固有受容器とPNF
PNFでは固有受容器を刺激して神経筋の反応を高めることが基本となります。繰り返し運動することで神経系が最適化され、無駄な筋活動が抑制され効率的な運動が可能となります。
| 部位 | 固有受容器 | 受容する刺激 |
|---|---|---|
| 迷路 | 前庭器・三半規管 | 頭の位置や運動 |
| 筋肉 | 筋紡錘 | 筋長の変化 |
| 腱 | 腱紡錘 | 筋収縮・張力・筋長変化 |
| 関節包 | ルフィニ終末 | 関節運動の方向・速さ |
| 靱帯 | パチニ小体 | わずかな運動や加速度 |
PNFの治療目標
脳卒中患者を例にすると、機能は次の三つに分類されます。
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残存機能：現存する機能 → 強化
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回復機能：失われた機能 → 促通して回復
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代行機能：回復困難な機能 → 別の機能で補う
PNFでは、残存機能の強化 → 回復機能の促通 → 代行機能の再獲得という流れで日常生活動作の自立を目指します。
PNF運動パターン
PNFには特徴的な対角線上の三次元運動パターンがあります。
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屈曲－伸展、内転－外転、内旋－外旋の要素が組み合わさる
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解剖学的構造に沿った自然な運動で固有受容器を効率的に刺激
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求心性・遠心性・等尺性収縮を組み合わせて実施
Q&A
Q1. PNFはどんな患者に有効？
A. 脳卒中や整形外科疾患など、神経筋機能の改善を目的とする幅広い患者に有効です。
Q2. PNFと通常の筋トレの違いは？
A. PNFは三次元的な対角運動と多様な収縮様態を用い、固有受容器を刺激して神経筋反応を高める点が特徴です。
Q3. なぜPNFでは最大負荷をかけるの？
A. 過負荷の原理に基づき、筋力向上には疲労するレベルの負荷が必要だからです。
Q4. PNF運動パターンの利点は？
A. 解剖学的に自然な動きで固有受容器を効率的に刺激し、実生活に近い機能回復を促せます。
最終更新：2025-09-19