上腕筋(brachialis)

上腕筋の概要

上腕筋の起始・停止(上腕骨前面下半〜尺骨粗面)

上腕二頭筋の深層で上腕骨前面下半~筋間中隔から起こり、尺骨粗面へ停止する肘屈曲の主動作筋(最強筋)。尺骨に付くため回内・回外の影響を受けずに一定のトルクを発揮します。腱成分が少ない“筋腹主体”なので柔らかい一方、長期固定や外傷後の線維化→肘屈曲拘縮に注意。

基本データ

項目 内容
支配神経 筋皮神経 (※多くの個体で外側部に橈骨神経枝 C5–C7からも支配が加わる)
髄節 C5–C6
起始 上腕骨前面下半・内外筋間中隔
停止 尺骨粗面(前方関節包へ連続)
栄養血管 橈骨反回動脈を主、上腕動脈枝
動作 肘関節屈曲(前腕位に左右されにくい)
筋体積 約266 ㎤
筋線維長 約10.3 ㎝

運動貢献の目安(状況別)

  • 低負荷+回外位:二頭筋の寄与↑

  • 高負荷または回内位上腕筋の寄与最大

  • 中間位+高速屈曲:腕橈骨筋の関与↑

  • 体積は二頭筋に劣るが羽状性→PCSAが大きく出力有利

触診方法

  • 開始肢位:肩関節深屈曲、肘関節90°屈曲、前腕回内位。
  • 触診ライン:上腕二頭筋の深層を通り、上腕骨前面下半の硬い筋腹を探る。
  • コツ:肘屈曲をゆっくり行い、上腕二頭筋が収縮して盛り上がる前に深部で硬化する線維を捉える。
  • エラー回避:回外やスピードを上げると上腕二頭筋の関与が増えるため避ける。

ストレッチ方法

  • 上腕筋を完全選択したストレッチは困難。基本は肘伸展+回内位で相対的に上腕筋へ負荷。

  • 前面組織(上腕筋-筋間中隔-前方関節包)の滑走改善を優先。肘屈曲拘縮が疑われる場合は前方関節包の軽度牽引+組織間リリースを併用。

  • 上腕筋は筋間中隔と滑走不全が生じやすい場所であり、上腕骨外側上顆炎の原因となりやすいので硬さのチェックが必須。

筋力トレーニング

  • リバースカール:前腕回内でダンベル/バー。肘を体側に保ち反動なく上下。

  • ハンマーカール:中間位で上腕筋+腕橈骨筋。

  • 処方:10–15回 × 2–4セット、週2–3。肘の前方移動・反動は抑制

トリガーポイント(TP)

  • 主訴母指付け根(CM基部)の鈍痛/朝のこわばり。肘前面〜外側の張り・圧迫感、終末伸展時のイヤな抵抗感。

  • 誘因抱っこ・買い物袋・腕掛け鞄の持続負荷、長時間キーボード(微弱等尺の持続)、管楽器(オーボエ/クラ/サックス)で右母指支持が強い奏者


関連トピック/臨床メモ

  • 肘屈曲拘縮:筋腹主体は線維化しやすい前方関節包の滑走不全を併発しやすい。

  • 筋皮神経:烏口腕筋を貫通後に二頭筋・上腕筋を支配。絞扼で肘屈曲筋力↓+前腕外側の感覚異常

  • 外側上顆痛(上腕骨外側上顆炎):上腕筋‐外側筋間中隔の滑走不全が負荷伝達を変え、症状助長の一因に。


よくある質問(Q&A)

Q1. 上腕筋と上腕二頭筋、どう評価を分ける?
A. 回内位×低速の屈曲抵抗で上腕筋を選択。回外・高速は二頭筋が優位。

Q2. 上腕筋だけを伸ばすのは難しい?
A. 100%の選択は難しいが、肘伸展+回内で相対的に狙える。前面の組織間リリースを併用。

Q3. テニス肘と関係ある?
A. 上腕筋-筋間中隔の滑走低下が外側組織へのストレス配分を変え、痛みを助長しうる。

Q4. いつ受診すべき?
A. 進行性の筋力低下/感覚鈍麻の拡大、夜間痛の増悪、外傷後の腫脹・発赤・熱感があるときは専門受診を。


最終更新:2025-10-11